第6話

 蓮は落ち込んでいた。


 温森さんが好きな人は誰なんだろう?


 ボーッと帰り道を一人で歩いていたら、姫里が走って近づいてきた。


「蓮!ボーッと歩いてどうしたの?元気ない?もしかして振られた?」


 姫里は痛いところを突いてくる。


「あぁ…温森さん好きな人いるって…。」


「え?誰?本当に聞いたの?」


「うん、さっき一緒に荷物運んでる時。誰かまでは教えてくれなかったけど。」


「蓮じゃないの?」


「それは無い。だって、なんか嫌そうな…難しい顔してたから。」


「そうなの?

 蓮さ、かなり人の気持ちに鈍感だよね、自覚してる?」


「え?俺、中2だよ?好きか嫌いかくらい分かるよ。」


「そう?私が藍山くん好きなのは分からなかったのに?」


「いや、それは友達としてか恋愛としてか、っていう話で、好きは好きだろ?それとは違うよ。」


「そっか。

 私さ、3年生の時転校してきたでしょ?そしたら皆、途中から来たよそ者って感じで冷たくて…。それにウチお金持ちだから『私立に行けばいいのに』とか言われたりして。なかなか友達もできなくて居場所無いなーって思ってたけど、そんな時、蓮がフツーに話かけてくれて…。なんかいつも側に来てくれて。」


「そうだっけ?姫里が俺のところにいつも来てたと思うけど。」


「ううん、最初は蓮から来てくれてたんだよ。なんていうかさ、蓮がすごく鈍感で、周りの人が私を見る空気とか気付いてなくて、それにすごく助けられたんだよね。」


「えー?そんな変な空気だったっけ?覚えてない。」


「ほらね!やっぱり鈍感だ。

 ね…、5年生の時、富津さんのことあったじゃない?」


「知ってたんだ。」


「うん、もちろん意地悪した人達のことは知らないよ。でもさ、あの時と温森さんとはきっと違うし、守ってあげれると思うよ。もう5年生じゃないし。

 もう一度、ちゃんと確かめた方がいいよ。

 じゃあね!」


 姫里は走って帰っていった。


 何がどう違う?


 温森さんは赤い顔して困ってたようにしか見えなかった。


 姫里が俺を鈍感だとディスりたかったのか?…ではないよな。励ましてたし。


 んー…よく分からない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る