第5話

 姫里は藍山に告白し、めでたく付き合うことになった。


 今度は“俺が姫里に振られた”と噂になった。

 俺は皆の、可哀想な人という哀れみの視線が痛い。


 でも、姫里はすごく嬉しそうだ。


 姫里と藍山が付き合いだしたからか、最近近江と共田もなんか前より距離が近い。


 俺、一人ぼっちかも…。


 一応今まで通りグループではいるけど、その中で一人ぼっちの感覚だ。

 俺はここにいていいのか?と考える。


 ある日温森さんと一緒に日直になった。

 そして職員室から荷物を運んでほしいと二人で呼ばれた。


 職員室から教室まで結構な距離がある。

 一回では運べなかったので、最低でも二往復しないといけなかった。

 温森さんと話するチャンスだと思った。


 でも、小学5年生のあの時以来、グループ以外の女子と話することがほとんど無かったから、何話そうか迷う。


「温森さん、」


「は、はいっ。」

 温森さんは、ちょっとびっくりした感じで蓮の方をチラッと見て、すぐうつむいた。


 もしかして話かけたらダメだったかな?と思ったけど、このチャンスを逃したくないと、もう一度話しかける。


「温森さんは、その…、好きな人とかいるの?」


 やっぱりこの話題しか思い付かなかった。


「えっ?えーと、えっと、あ、ハイ…あ、いや、やっぱり好きっていうか、その、なんていうか…。」


「いるんだ!え?同じクラスのやつ?俺知ってる人?」


「えーっ…どうかなー…。でも何でそんな事聞くの?あ、夏河くんは?…姫里さん?あっ…ごめん!」


「え?温森さんもやっぱりそう思ってたんだ…。違うよ。俺、姫里はただの友達だから。」


「そうなんだ。私てっきり…。」


「俺さ、温森さんのことさ…。」

“好き”って言いかけて、蓮はハッとした。


温森さんが真っ赤な顔して困ったような迷惑そうな表情をしていたのだ。


 5年生の時の富津さんと被って見えた。


 またあの時のように“迷惑なの!”って拒絶されたらどうしようと思った。


「ごめん、やっぱり何でもない…。」

 それ以上は言えなかった。

 その後は、二人とも無言だった。


 

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