第2話

 俺が小学5年生の時、初めて気になる子が現れた。


 名前は富津ふっつさん。


近くにいたくて、話かけたり、消しゴム借りたり、肩をトントンして隠れたり。


 ちょっとイタズラが過ぎて怒らせた事もあったけど、割といい感じに仲良くなれていたと思う。


 だけどある日の長休みの時間、富津さんの側に行くと、


「もう、私の近くに来ないで!」


と、すごく怒った顔で俺に言う。


 え…⁈


 俺はびっくりしてキョトン顔。


「夏河くんとはもう関わりたくないの。迷惑なの!」


 突然の拒絶。


 多分、人生で初めての。


 しかも富津さんに…!


 授業中もずっと「迷惑なの!」が頭の中でループする。


 俺、何かしたかなぁ…?


 全く思い当たるところが無い。


 昼休みに人が少なくなったのを見計らってもう一度近づいてみる。


 富津さんは嫌な顔をして逃げようとしたから、思わず手を掴んだ。


「離して!」


「何で?俺、何かした?」


「何でもない!」


「何でもなくて、何でそんなに怒るんだよ!」


「だって…!夏河くんと一緒にいたら、絶交だって脅されたんだもん!」


富津さんは周りを気にしながら、小声でそう言った。


「え?何それ?誰に⁈」


「言わない!だってイジメられるの嫌だし!だからもう本当、私に近づかないで!」


 富津さんは赤い顔して少し涙目になって、怒った顔で俺を睨だ。


 誰がそんな事をするんだろう?


 俺は藍山に相談してみた。すると、


「なんかさ、昨日の帰り富津さんがクラスの女子に囲まれてた。」


「見たの?」


「うん、そん時、蓮のことで酷い事言われてたぞ。」


「何て?」


「いつのまにか、女子は皆、蓮に近づいたらダメみたいになってるらしい。近づいていいのは姫里だけだって。姫里と一緒にいる子ならセーフらしいけど。」


「え?何で?

 もしかして俺、女子に嫌われてる?」


 おそるおそる聞くと、


「じゃなくて!お前イケメンだから、お前のこと好きな女子がいっぱいいるらしい。だから、抜け駆けするような事したらダメなんだって!」


「何だそれ?」


「で、『富津さん可愛くないのにズルい!夏河くんに近づかないで!これ以上一緒に遊んだりしたら、皆で絶交だからね!』って。」


「それってイジメじゃん!」


「ああ、だから、おまえ富津さんと喋ったらダメだぞ!」


 …全く理解できない。


 俺に近づくなって誰が決めた?それに…


 「富津さんは可愛いくないのか?ぽっちゃりしてて、メガネが似合って、姫里よりも可愛いと思うけど。」と、俺が言うと、


「おまえマジで言ってんの?姫里より可愛い子、この学校にいないぞ!目がくりっとデカくて、顔ちっちゃくて、細くて。それに、金持ちの家のお嬢だぞ!富津より可愛いに決まってる!」


 近くにいた他の男子も大きくうなずく。


「俺にはよく分からん。普通にしか見えん。」


「目医者行ってこい!」


皆に呆れられてしまった。


 家に帰って、よく考えた。


 出した結論は、富津さんはもちろん俺から女子に話かけるのはやめようということ。


 しばらくは富津さんの事が気になったけど、

あれ以来全く話しなくなり、俺の気持ちは初恋に到達しないまま不完全で終わった。

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