第2話 旧き日々の終わりと新しき毎日の始まり

 私の名前は水野 涼。


 少し男の子っぽい名前だけど普通の女子高生だった。


 何事もない日常。仲の良い友人達に優しくも厳しい両親。毎日が幸せだった。


 しかしその幸せは唐突に奪われる。余所見運転をしていたオープンカーに撥ねられた。


 最後に見た光景は慌てて逃げていくオープンカーの姿だった。






 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






 「眼は覚めたかの?」


 次に見た光景は立派な髭の生えたお爺さんの顔だった。


 「あの……私、轢かれて死んだと思うんですけど、ここどこですか?」


 テンプレとしか言いようのない真っ白い空間でちょっとした気味の悪さを感じる。


 「ここは神界じゃよ。なにもないのはさっきまで下界を創っておったからじゃ」


 「世界って創れるもんなんですか……」


 「創れなかったら今までお主はどんな場所で暮らしておったのかの?」


 毒あるなこの爺。


 一言多いよ。


 「あの!私はどのように死んだのでしょうか?」


 「お主なら体のあらゆる内蔵という内蔵がぐちゃぐちゃに潰れた上に骨が曲がってはいけない方向に曲がっておったぞ。唯一の救いは顔が原型を留めていたことじゃな。……うぷっ思い出したら吐きそうになったわい……。ビニール袋はどこかの?」


 ほんとに毒みたいなもん吐くなよ。


 それに私が聞きたいことはそうじゃない。何が好き好んで自分の死体の実況解説されないといけないのだ。


 ゲロ爺が吐いたあとに何事もなかったのかのように話す。


 「さて、前置きはここまでとして、お主に任せたいことがある」


 「任せたいこと?ですか」


 「あぁそうじゃ。任せたいことは儂の世界でダンジョンマスターになって欲しいのじゃ」


 「ダンジョンマスター?死に役じゃないですか」


 「まぁそうじゃの。事実儂達がしてほしいことは人類に団結を生み、この世界から停滞を無くしてもらいたいだけだからの」


 「じゃあ私はその生贄ってことですか?」


 「そうともいうが、どちらかというと圧倒的な力と配下を持つ大魔王になって欲しいのじゃ。そうすれば長い間人類は自分達で争うという愚かなことをしないからの」


 「行く気はないけど圧倒的な力は努力すればどうとでもなりそうだけど配下はどうするんですか?行く気はないけど」


 「安心するのじゃ。行く気はなくとも無理矢理行かせるからの。配下はガチャで手に入るぞ。分かりやすく言えばソシャゲのガチャじゃな」


 「ソシャゲっすか」


 「ソシャゲっすよ」


 まじかいな。


 「では行く前にこれを渡しておくかの」


 「いや、あのまだ行くって決めたわけじゃ……そもそも行く気ないです」


 「これはダンジョンコアというものじゃ。これを使ってダンジョンの拡張や配下の召喚や合成を行う。……そうそう、安心するといい、コアを壊されたところでコアと一緒に死ぬようなことはないからの」


 あっこのクソジジイ無視してやがるな。


 「では、新たなる世界へ旅立つといい。下界の文明は大体古代ギリシア辺りだから人里離れたところに作れば最初から襲われることはないからの」


 「いや、まだ行くって決めたわけじゃ……」


 「ではまた逢う日までさらばじゃ!!」


 そう言うと私の体は薄れていき、この世界から完全に消え去った。

 


 


 


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