魔王になったダンジョンマスター。
春海天夏
序章・氷の巨城と新秩序
第1話 とあるダンジョンマスターのプロローグ
誰が見ても美しいと答えるであろう巨大な白亜の巨城にて……
「なんなんだよ!!このバカみたいな量のモンスターは!!いくら殺しても全く減らねぇ!!」
大剣を背負った四十代くらいの男が白い氷で出来た通路を人間とは思えない程の速さで駆け抜ける。
それがこのダンジョンに追い詰められているとも知らずに……
男――Sランク冒険者セドリック・エルライン――は驕っていた。
Sランク冒険者、それは確かに凄まじい肩書だろう。しかしSランク冒険者の強さのレベルは小国で一番程度なのだ。さらに上にはSSランク、SSSランク、果てには世界で最強クラスのEXランクという常識の埒外にある存在もいるのだ。Sランク冒険者などたかが知れている。
「ハァハァ……ッやっと出口か!!」
未だ彼はダンジョンに追い詰められていると知らない。
彼の目線の先には氷で出来た扉があった。
扉を壊す勢いで開け放つ。
そこには口から霜を吐く巨大なドラゴンが居た。
「……嘘たろ……。何でこんなところに、ホワイトドラゴンが居るんだよ……」
力が抜け、床に膝をつける。
もう、立ち向かう気力は彼には残っていなかった。
そんな彼をホワイトドラゴンは一瞥し、氷で出来た杭を生み出した。
そして、それを彼の心臓に突き立てた。
血が流れるが絶対零度で作られた杭に触れるたびにどんどん個体化し床に血が飛び散ることは無かった。
また一人勇敢で無謀な戦士が散っていった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「う〜ん、DPがあまり取れなかったなぁ。一人でホワイトドラゴン一体分くらいかな」
机に突っ伏して先程の映像を見ていた女子高生位の少女がつぶやく。
「お嬢様、はしたないですよ。ほらもっとしっかりしてください」
少女の側に控えていたメイドがそう小言を言った。
「えぇ〜面倒くさいよ〜。別に良いじゃんここには私と貴方しかいないし……」
「それでもです!!お嬢様はそんなでも魔王の一人なんですよ!!」
「でももう何百年も人前に出てないんだよ……。気にする必要なんて無くない?」
「何言ってるんですか、明日は五十年ぶりの新しいダンジョンマスターの新勧式ですよ!!もう5回も出てないんですから創世神様方に色々と言われますよ!!」
「それは嫌だなぁ。しょうがないなぁ……行くしかないかぁ〜」
「お嬢様がその気になってくれて嬉しいです!!早速明日のお召し物をご用意してきます!!」
そう言うと扉を開け、少女の部屋から出ていった。
このやり取りは誰も知らない。このダンジョンで働く者以外。
何故ならあの少女はメイドが言った通り、魔王の一人なのだから。
今日もこの秘密は誰にも知られない。世界で8つしか存在しないEXダンジョンの最上階だから。
正式名称EXランク指定ダンジョン・
その主、氷結の大魔王・リティシア・ホワイトクリスタル。
彼女の日々は今日も過ぎ去る。
美しき氷の巨城にて。
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