第一章 「修行」

第11話 強く

(ー!!ター!!・・・・・マスター!!)


「は!?」


 まだ、日の光が出ていない真夜中。一つの声が聞えたので俺は目覚める。そして、まだ痛む身体を無理矢理起こす。


(マスター!ご無事で!)


「あ、あぁ、俺は大丈夫だ。それより魔物は」


 辺りを見渡したが、スライムの姿は見当たらなかった。そして、あの薄暗かった世界ではなかった。元の世界に帰って来たのか。


(反鏡世界は魔物が倒されれば数分後に自動で消滅しまうため、何もしなくてもこっちの世界に帰って来れます。そして、スライムなら途中で参戦してきた男によって瞬殺されました)


「そうか・・・・・・」


 俺はあの時の事を思い出す。スライムの攻撃が目の前に来た瞬間、死を覚悟していた俺の前に現れた男。


「何者なんだ、いったい」


(分かりません。しかし、彼は時の魔術を使用していましたので、相当の手練れでしょう)


「時の魔術?」


(はい。禁忌魔術の一つで、その名の通り、時を操ります。私は彼が反鏡世界に入った事は確認しましたが、彼とマスターの距離は10メートルはありました。しかし、彼は一瞬でマスターの前に現れました。どんな人間でも予備動作と言って、動く際に現れるものですが、彼にはそれがありませんでした。人が全くの予備動作なしに動くことはあり得ない、そして魔力の行使を確認したので、結果、時の魔術を使ったと私は思っています)


「アスナがそういうならそうなんだろうな」


 そして、俺は自分のこぶしを見つめる。


 甘い考えだったんだな、この世界で生きるという事は。


 身に染みて理解した。少しステータスが上がっただけで舞い上がって、アスナにおすすめされてたのに舐めプで行って、そして、ボコられる。


「あんな誓いをしておきながらこれとは、ますます遠のくな」


(誓いとは、リリーさんを魔法少女しなくてもいいようにする。というやつですか)


「あぁ、だがこのざまだ。リリーや聖馬だったら、こんな魔物一瞬で倒せるんだろうな」


(はい、恐らくは)


「・・・・・・強くなりたいな。もちろん、正体はバレたくはないが、陰ながらサポートできるくらいには強くなりたい」


(はい、そうですね)


 俺は座った状態から立ち上がる。


「じゃあ、帰って来てからは修業だな。ミッションをクリアして、木刀で素振りして剣術のレベルを上げる。まずはこれからだな」


(はい!!頑張りましょう!)


「あぁ、そうだな。・・・・・で、さっきから気になっていたんだが、あれはなんだ?」


 俺は、目のまえにあった剣と本を指差す。気づいてはいたのだが、この会話の雰囲気から話そうにも話せなかった。


(あれはですね。ミッションを達成した報酬ですね)


「あの魔物を倒せってやつだろ?俺は倒してないぞ?」


(いえ、あの男と共闘判定したじゃありませんか。なので、倒してはいませんが報酬は貰えます)


「・・・それでいいのか」


(いいのです)


「納得いかねぇ~」


 俺はそうつぶやくのだった。


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