第10話 スライム戦

 木刀を構えると、スライムが触手を飛ばしてきたので、俺はそれを横へ避ける。


 スライムの触手攻撃は見えるスピードの攻撃なので『身体強化』を使用しなくてもどうにか避けられる。その後も、触手攻撃を何度も避ける。試しに最後に来た触手を木刀で打ち返すことに決めた。


「ふん!!」


 来た触手に向かって木刀を振ってみるが、ただただ柔らかい物を叩いている感触が手に残ってスライムの触手の攻撃を逸らすことが出来た。


「やっぱり切れないか」


(当たり前です。まだマスターの剣術は素人に毛が生えた状態なので、その程度しかできません)


「やっぱりか」


 改めて事実を受けとめ、スライムの方へ眼を向ける。奴は四本の触手をうねうねさせながら待っている。


 その後も、スライムの攻撃は続き、俺は避けては逸らし、避けては逸らしを繰り返していた。


 これじゃあ、いつまで経っても近づけないと思っていると、正面から触手が飛んできたので、それを木刀で受け取めながら一つ考えてみる。


 ・・・一度、近づいてみるか


 奴は俺を近づけさせないように、四本ある触手を交互に使いながら、接近させないようにしている。しかし、それでは埒が明かないので、正面に来ている触手をはじくと、木刀を走りやすいように木刀の先を地面すれすれにまで持っていき、後ろで構える。


 そして、走り出すと同時に『身体強化』を使用し速度を上げる。俺が走ったのが分かると、スライムは四本の触手を俺に放って来る。一つは右に避け、もう一つは木刀を滑らせるように下から上へ持っていき、切り上げ、逸らす。


 三本目は振り上げた木刀を『身体強化』で多少上がった力を強引に使い、振り上げた木刀の動きを止め、そのまま下へ振り下げる。三本目まで上手く行ったが、四本目は振り下げた所の硬直の所をピンポイントで狙われ、腹の鳩尾を突く。


「がはっ!!」


 人の弱点である鳩尾に攻撃をもらった俺は、呼吸困難になりながらそのまま動きを止め、腹を手で抑えながら蹲る。


 は、腹が痛くて、こ、呼吸、できない


(マスター!!早く動いてください!!敵の攻撃が来ます!!)


 スライムは俺が止まった事をチャンスと捉え、未だ動けないでいる俺に容赦なく触手で攻撃をしてくる。


 目視は出来ていたが、避けようとしても身体が動かない。




・・・・・あぁ、死ぬのか、俺は・・・・



 今まで、ただの学生として生きてきた俺が、急に力が与えられ、強くなれると分かって、弱い魔物と聞いて、俺の踏み台としか思ってなかったスライムが今、攻撃が来ているというのに動けない状態でいる。


(・・・・ー!!・・・・たー!!)


 ゆっくりになった世界でアスナが声をかけてくるのが分かる。だが、それでも動けないでいた。・・・・・恐怖と痛みで足が動かなかった。


 そして、触手が俺の目の前に来た瞬間、俺は死を覚悟して目を瞑った。


・・・しかし、顔に来るはずの痛みは来ることは無かった。


 目を開くと、俺の前には謎の高身長の人がいた。体格からして男のものだろう。


「少年、そこで休んでいろ」


 ・・・・・・あぁ・・・・・・助かった・・・・・・のか。


 そう思った俺は、さっきからあった恐怖は無くなり、安心しきって気絶してしまった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 序章はここまでです!!次からは第一章『修行編』が始まります!!


 不定期になりますが、投稿するまで暫しお待ちください。

 





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