なんとかなるよ、きっと

 「とりあえず、閻魔様がしばらくの間私たちを育ててくれたってことよね?」


 「そうだが、実際のところ、こことあちらの世界では時の流れや理も全く異なる。こちらに適応してもらうためにある程度力を与えた時に、まぁ、色々あってな…」


 「色々って…でも確かに変ね、一年前とか何してたかすらさっぱり覚えてないわ。」

 「私もお姉ちゃんと同じ…何もわからない…」


 「そうであろうな、そもそも完全に死んでいない人間がこちらへ来ること自体おかしかったのだ。当時は非常に怒られたりしたが…まぁよい。」


 「まぁ後は想像で補うわ。」

 

 「そうしてもらえると助かる永夜。」


 「で、結局なんだけど、これから私たちはずっとここで仕事しながら暮らしていけばいいの?」


 閻魔は顔を多少顰めながらも、決心した様子で二人にこう述べた。


 「いずれ私が全責任を持って二人を現世へ戻すこととしよう。どのみち、元々ここの者達とお前らではやはり根本から違うのだ。今は平気だとしても、完全に染まってしまう前に…」


 「そんなのことできるの!?」

 永夜は驚きのあまりいつにもなく大声を出し、常夜は驚嘆し声すら出せない様子であった。


 「いやだって…実際私たちって死んだことになってるのよね?だったら…」


 「私を誰だと思っておるのだ、そのようなこと、多少捻じ曲げれば問題ない。」


 「強引ね…でも、頼りにしてるわ。」

 

 「お姉ちゃん、これで現世で行きたいって言ってた色んなところに行けるね!!」


 閻魔に感謝しつつ、二人は喜び合った。だがしかし、閻魔は一つ伝えることを言い忘れていた。


 「…一つ伝えねばならないことがある。現世に戻すと言ったが、実際は生まれ変わりのような扱いになる。したがってお前達のこれまでの記憶も消えるし、姉妹では無くなる可能性も否定出来ん。」


 

沈黙が続いた。



静寂を破ったのは常夜。

 「それでも、ここで過ごした事実や姉妹でやってきた事実は消えないから…」

 


 「まぁ、どのみちここにも長く入れないんでしょ?じゃあ、受け入れるしかないわね」

 理解していたかのように永夜も続く。

 

 覚悟はとっくに決まっていた。


 姉妹の絆はそう簡単に消えやしないから。


 

 いよいよその日がやってきた。


 宮殿の広間で儀式が執り行われようとしていた。

最後の姿を見ようと、数多の役人、あるいわ地獄の獄卒たちまでもが駆けつけていた。それほどの人気ぶりが伺える光景がそこには広がっていた。



 「準備は整った、では、これより。」

 閻魔は儀式の最終段階へと進める。 


 「嬢ちゃん達〜ありがとよ〜」

 「元気でなぁ〜ー!!」

 「俺達のこと忘れんじゃねぇぞぉ〜!」


 最後とあって、外野からも様々な声が飛び交う。

 それほどまでに、彼女らの存在は大きなものであった。


 「いよいよね、常夜。」

 「うん!」

  

 二人は互いに見つめ合い、手を取り合った。

そして閻魔や観衆に一礼。


 「では、達者でな!新しき門出に幸あれ!」


 全てを無に帰すような光。

 冥界はこの瞬間だけ、天界のような光り輝く場所と化した。



 「やっぱり常夜、不安?」

 「大丈夫だよ、二人一緒なら」

 「そうね、きっとなんとかなるわよね!!」

 「うん、絶対!!」



 

 光は消え、そこには静寂だけが取り残された。


 

 


 

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