時に残酷で…
「僕の住んでる村は、とても平和な所だったんだけど、気がついたらあたりは真っ赤で真っ暗だったの。怖くて逃げ出しちゃって、でもあんまり記憶ないんだ…気づけばここにいて…お姉ちゃん達の会話が聞こえたから誰か人に会える!と思って…」
それを聞いた瞬間、常夜はなぜこの子が私達を認識できているかを理解した。そして、この地方に起きている現実も。かつて指導役をしていてくれた役人が言っていたのを思い出す。
「人間世界は基本的に不安定なのさ、だから定期的に争い事が起こる。どれも自分や自分の国が一番だと考えるから、表立っては調和とか云々言ってても、結局いつかは拗れるものなんだよなぁ。で、これを覚えておいてほしいんだが、いわゆるこの争いが発展した時、場所によっては大勢の魂の刈り入れ時になるんだよ。」
ようやく、永夜も状況を理解したのか、男の子に質問を出す。
「とりあえず、東の方の村から来たってのは間違いないのよね?」
「うん」
「頑張ったね、えらいえらい。」
二人はそう言ってそっと男の子の頭を撫でた。
常夜は一息置いて、その少年に告げることを決意した。それは残酷で、でも変えようがない、事実。それでも。彼女たちなりの誠意を込めて…。しかし、その意思を汲み取ったのか、先に姉に全てを言われてしまった。
「ありがとう。でも君もこれ以上ここにいたらまた大変なことになっちゃうかもだから…少しだけ、目をつぶって…私たちに身を預けてくれる?」
二人とも、感情がゼロなわけではない。とりわけ、こういったまだ20歳にも遠く及ばない子たちが去っていくことに対して、常夜は人一倍に心を痛めるようになっていた。そういった所の配慮かもしれない。やっぱり、姉には頭が上がらないや。
「お姉ちゃんたち、ありがとう。最後に会えたのが二人でよかったな」
儀式を始め、次第に少年の体が光に消え始める。
「願わくば、この子が次世ではちゃんと成長して良い人生を歩めますように…」
「魂よ、安らかに…汝に幸あらんことを…」
しばらくの間、静寂は流れ、姉妹は少年が来たという東の方角は足を向かわせるのだった。
「…少し常夜の人に対する気持ちが分かってきたわ」
姉の心には、悲しみやら複雑な感情が出現し始め、当初の願い事のことはすっかりと頭から抜け落ちているほどだった。
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