現世の現実と推しに出会えた男たち

  時に人々は残虐な争いを繰り返す。彼女らが見た光景は、地獄とそう大差のない光景であった。

 木々や建物は崩壊し、街の至る所には炎が燃え盛っている。地面にはどす黒い血のようなものが散乱していたり、衣類の剥げた一部のようなものがそこらじゅうに見て取れる。

 

 加えて、彼女らは死人が彷徨っている姿を見ることが出来たのだが、見たこともない初めての光景にしばらく呆気に取られていた。

 戦争ということで、若い兵士たたちはもちろんのこと、老若男女関わらずその魂魄たちはまるで幽霊の舞踏会であるかの如く、あらゆるところに跋扈していた。泣く者、騒ぐもの、死んだことに気づかず剣を振るう剣士、様々であった。

 

 「これは久々にえぐいもの見たなぁ」

 気づけば、後ろには自分たちと同じ役人が数名来ていた。

 「まぁ、人間は時にむごいことするからなぁ、嬢ちゃんたち、見るのは始めてか?」


 「そうね…聞いてはいたけど、ここまで酷いのね…」

 「………」

 妹の常夜に至っては声に詰まって何も言えなかった。実際、二人はこの光景を見ることは初めてであり、自分たちの想像以上に心を抉られたような気持ちに陥っていた。

 「ま、これを俺らが止めることは出来ねぇ、出来るのは、ちゃんと魂をあの世へ連れてってあげることだ。それと、割り切って荒稼ぎできると思って早めにやったほうがいいぞ、いずれ他の連中も駆けつけてくるしな」

 

 「そうね、丁寧にありがとう」

 二人は丁寧にお礼を言い、決意を決めて、仕事に取り掛かった。


 「俺の推したち…折れるんじゃねぇぞ、頑張れよ…」

 「やっぱ間近で観るとバカ可愛ええわ」

 「止まるんじゃねぇぞ…」


 密かに姉妹を推していたこの男たちにとっては、会話をすることが出来た時点で、もう目標を達成したかのような安堵に包まれていた。


 「やべっ、俺たちも仕事しなきゃまた上に怒られちまう!」


 男たちもまた、姉妹の後を追うように駆けていった。



 

 

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