優しくて冷静な妹とビビりで適当な姉

 やはりあの件があってからというもの、姉の機嫌も調子も頗る良いのを常夜は感じていた。事実、ここ数日成果なしだったところを、すでに今日2人分をも既にこなしている。

 「良かったわね、ちょうど良いタイミングで現れてくれて!」

 「でもまだ若そうだったし…事故か何かかな…?おそらく恋人同士だったから…やっぱそういうとこ考えちゃうとちょっと悲しいな」

 「そーいうところ、やっぱり常夜は優しい子ね、でも、もし私たちが現世で生まれてたら…あーいう風に恋人作ってたのかな…」

 実際、永夜は現世への憧れが少しずつ強くなっていた。冥界には無い、煌びやかな街並み、行き交う男女、豊かな自然、澄んだ青空。人は、よくないものねだりをすると言うが、それが人として自然なのかもしれない。

 願い事や評価がかかっているため、いつもより丁寧に葬送し、次に取り掛かる。

 「まぁちょっと事後になるけど、報告書も書けたし、この調子で後五人くらい行くわよ!」

 「前みたいに怒られたり、書類ミスして怒られるのは嫌だなぁ…」

 この仕事を始めて以来、二人は怒られるという状態に多少は慣れたものの、結局は仕事や他人の評価に響くのでそこら辺の管理はしっかりしていた…はず。

 「書類時々てきとーに書いてたって言ったらどーなるかな笑」

 「お姉ちゃんってよくそんな気楽に出来るよね、私なら心配で昼しか眠れない」

 「それを言うなら夜も眠れ…」



「……ちゃん達、そこで何してるの??」


「…ひ??!!?!ぇ!??!」

永夜が声にならないような叫びをあげ、振り向くとそこには5.6歳くらいの男の子が1人、立っていた


 「何で私たちのこと見えるのっ!?、てか常夜は何で驚きもしないのっ!?

 「お姉ちゃん越しにちょっと前からこの子、見えてたから」

 「もうそうなら早く言ってよぉ〜!」

 実は姉は非常にビビりである。対照的に妹は基本的に常に冷静である。だから、足りないところは二人で補い合って、頑張っていこうと約束した。だがこの場合腰を抜かしてしまっている姉は当分使いものになりそうにないことを悟った常夜は、ひとまず男の子と話してみることにした。

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