人はある日突然躍起になるんです
「閻魔様…ほんとにあの二人大丈夫なんですかね…」
「大臣よ、心配するでない、あの目の輝きを見たじゃろう」
「まぁ、なんやかんや言っても気にされてますからね閻魔様。」
「ファンクラブ作りたいと真っ先に言っていたのは大臣の方ではないか…」
宮殿の最奥部、閻魔大王の個室にて、王と大臣は会話を弾ませていた。閻魔とて基本的に常に忙しいわけではなく、こうして役人たちが現世に出払っている時は、意外と退屈なものである。
「にしても、本当に願い叶えられるんですか?」
執拗深く疑う大臣に、閻魔は自信を持って答える。
「ここを何処だと思っておる?生死を捌く玄関門のような所じゃぞ、私が一度動けば大体の融通はなんとかなるもんぞ。」
時は少し遡り、数時間前。
冥界で働く役人たちが大広間に集められていた。
「なんなのよあのヒゲづらぁ…こんな時間に集めて何しでかすつもりなの?」
「案外…面白いこと言うかもよ?」
「そーだといいけど…」
不機嫌そうな姉を宥めつつ常夜は少し期待をしていた。なぜなら昨夜、偶然とある会話を聞いてしまったからだ。
「一位の成績を収めた役人に褒美?」
「そうじゃ、それもひとつだけ自由に願いを叶えてやるというとっておきの褒美じゃ、これで、皆はより一層躍起になって働きだすに違いない!!」
案の定、永夜は恐ろしいほどのやる気に満ち溢れていた。目をガンガンに輝かせ、体からオーラを存分に放ってしまうほどの効果があったらしい。
「ぜーったいに一位取ってやるわよ!!そして願いを叶えてもらうんだから!!」
「うーん…それなら体の弱い私を置いて、お姉ちゃんだけで行った方が稼げるかも…」
事実、ここ数週間で常夜は体の調子が悪くなりつつあるのを密かに感じていた。しかし誰にも言うことは出来なかった。そもそも冥界の人間は病気やなんやらとは無縁なのであるから。
「なに言ってんの!私たち二人で一人なのよ?」
そうやって永夜は、妹の手を強引に引っ張って、今夜も現世へと繰り出すのであった。
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