つかれました、おなかすきました。

 「仕事辞めたいんだけど」

 「だめ。住むとこなくなっちゃう」

 「こっちの世界にずっといられればなぁ〜」

 「仕方ないよ、丑三つ時には無理矢理帰還させられちゃうし…」

 「はぁ、もう疲れた…」

 

 姉妹はある時、閻魔に拾われ、それから冥界の屋敷の一部屋を借りて住んでいる。真夜中、妖や幽霊など、人ではない何かが蔓延る時間帯である。古来からのしきたりだという丑三つ時の帰還命令に、彼女たちは叛くことは出来ない。姉の永夜はもっと現世を見て回りたいと思っているのだが、どうにも仕事を一定こなさないと、冥界では食料の入手すらままならないのである。

 「おなかすいたぁぁ…」

 「常夜!もっと頑張りなさい!!私の昨日の分をあげるから!!!」

 しかも、役人たちには序列があり、それにより褒賞であったり一定の自由を与えられたりするのである。加えて、上位役人になった者の中には、現世の民のフリをして昼間から街中を練り歩く者もいる。まぁ時折それが問題になったりするのだが…

 無論、彼女たちはまだまだ日が浅く、一番下っ端の位置である。出てこれる場所は寂れた田舎町の外れの墓場である。閻魔や従者の計らいで衣類に関してはある程度良いものを与えられ、寝床も与えられたのだが、それ以外は完全に自分たちで頑張らねばならないのだ。


 結局本日も、成果はゼロであった。

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