第24話 やっぱり幼馴染みって、いいわよね
「こんばんは~!オジャマするよ」
「いらっしゃい、エトル。少し久しぶりね?」
「おう、エトル。三日ぶり!」
今日はエトルを我が家に招待した。婚約のお祝いと壮行会を兼ねて、の古い友人としての、ささやかなパーティー。
「あれ?お子ちゃまたちは?」
「今日はエマの所にお泊まりよ」
「そうそう。だから安心して酔いつぶれていいぞ」
「えぇ?三、四日後には俺、皇国行くからなあ。あんまり無理は……」
わちゃわちゃ盛り上がる二人を見つめる。やっぱりいいわよね、幼馴染みって。
あのミルちゃん招集の会議から三日。
トーマスもだけれど。ジークもローズもエマもいて、私だけが現場を見られなかった。
「何を言ってるの?私はその会議にいられなかったんだから!詳しく聞かせてもらうわよ?覚悟してね!」
私の言葉に、えぇ~、と苦笑いをするエトル。でも、とても幸せそうだ。私も嬉しくなる。
「さあ、いつまでもエントランスにいても仕方ないわ!部屋に移動しましょ!」
私の言葉に、二人がようやく動き出す。本当に楽しそう。
……自意識過剰かもしれないけれど、エトルがずっと独り身でいるのは、個人差の自由を理解していても私の中で気がかりでもあった。それが、恥ずかしいくらいの杞憂で済んで良かったと思う。
私もミルちゃんには、カリンのお家で何度か会っている。真っ直ぐ素直で優しい子だ。そんな子が添い遂げてくれるのだ。心から喜ばしい。
その後は三人でワインを5本も空けるほどの盛り上がった。私は、いつからミルちゃんに惹かれたのかだとか、いつ気づいたのだとか、どちらが告白したのかなんかを、聞きたいだけ聞いた。幸せな話は、聞いている方も幸せなのだ。
エトルは動揺したり照れたりと忙しそうにしながらも、なんだかんだ全て答えてくれた。うん、うん、惚気るのも楽しいわよね。なんて、そんな団欒が恙無く《つつがなく》?進んで行く。
「……今日は、ありがとうな。こんな、招待をしてくれて」
「何だ、いきなり」
さすがに酔いが回っているのだろう、エトルがふわふわとした表情でポツリと呟いた。それに返事をするトーマスも、ふわふわしている。
「昔、あんなにやらかした俺を二人で許してくれてさ……今までだって、いろいろ心配もしてくれていただろ?俺なんて、自分のことだけで手一杯だったのに……。
ローズとエマも、大事な友人だって……加護までつけてくれて……ありがたい、よな……」
「エトル……」
「おまえらと幼馴染み、で、よかっ……」
そこまで言って、エトルはテーブルに突っ伏して、寝息を立て始めた。
私とトーマスは顔を見合わせて笑った。
急に決まった長旅の準備と仕事の引き継ぎで、かなりの忙しさだったはず。疲れていたのだろう、アルコールに強いエトルにしては珍しいことだった。それに何より。
「私達に気を許してくれているのよね。うれしいわ」
「……そうだな」
今まで気楽そうにしているように見せていても、どこか緊張感を持っているように感じていた幼馴染みが、ようやく気を緩めてくれたのが、嬉しい。
トーマスが、ソファーに準備しておいた上掛けをエトルにかける。
すぅすぅと寝息を立てているエトルはまるで子どものようで。幸せそうな顔だ。
「エトルをベッドに運んで、私達も休みましょうか」
「ああ」
「私達も、もっと幸せになりましょうね」
「もちろん!愛しているよ、セレナ」
「ふふっ、ありがとう。私も愛しているわ」
軽くキスをかわす。
いろいろあって乗り越えてきた先の、この幸福な時間。
大切にしたいと思う。今となっては、エトルにだって感謝している。
翌日、実はあのあとすぐに目を覚ましたエトルが、いちゃつく私達を見て起きるに起きられなかった、と笑って告げられて、とても恥ずかしかったけれど。
友人たちの笑顔に囲まれて、今日も楽しく過ごせそうだ。
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ミルさんは、カリンの養女ちゃんです!仲良しです。
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初恋は成就しないと言うけれど 渡 幸美 @wata-yuki
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