第13話 憧れの

翌日。


待ちきれないリーゼ達に背中を押されて、エマ様に当日のお茶会を持ち掛ける事になってしまった。


ええ、逸る気持ちは理解できますが。



エマ様の体調も心配だったが快諾してくれて、しかもレイチェル様とカリン様もご一緒という、嬉しいプレゼント付きだった。


このお二人も、女生徒たちの憧れだ。


貴族のご令嬢なのに、堂々と自分の道を進む姿。以前よりは緩くなっているものの、婚約されていないのは珍しい。様々な壁を、小石を、嫌味の棘を、軽やかに躱す様は、痛快なくらいだ。





そして結論から言うと、お茶会は大変盛況に終わった。エマ様発案の事業に関して、当家の参加も示したし、皆様のお家もきっと参加なさるでしょう。更に嬉しかったのが、お互いに敬称無しで、砕けてお話が出来るようにもなったのだ。リーゼ達も改めての謝罪も出来て、ほっとしていた。もう、とっても有意義なお茶会でした!!



きっとリーゼもソフィアもシャロンも、一人でも進めるであろう道筋を手に入れた。一緒に頑張って行きたい。



そう、初恋は、叶わないものなのだ。



「あ、でも初恋と言っても、あの二人は上手く行きそうよね」


今は寮の自室。一人言る。つい、にやけてしまうわ。


お茶会の後の、ソフィアの攻撃(?)から始まった、エマのあれこれ。とても可愛らしかった。


「ハルト様は……間違いなく、初恋よね。それにしては絡み手がすごいけれど……でも、ふふっ、らしくない所もたくさん。エマも、あの様子だと初恋よね」



暫くは、恋愛だの婚約だのは遠慮したいけれど。



「やっぱり、ちょっと羨ましいな……」



想い思われる幸せというのは、どんな気持ちなのだろう。



「止め止め!さて、課題をやってしまいましょう!」


現実を受け止めて、頑張らないと!




……なんて、その時の私は、舞台のような場面に立ち合うなんて、想像もしなかったのだけれど。周りの皆もだったと思う。……まあ、普通しないわよね。




でも、ラインハルト様のあの教室での告白は、下手な舞台よりも感動的で、美しくて。こちらも幸せな気持ちになった。



……ちょっと、いや、かなり?やっぱり牽制はすごかったけれど。



素直に、羨ましくて、憧れるシーンだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る