第6話 聖女との出会い

30年振りにグリーク王国に生まれた聖女、エマ様。


平民だったとのことだけれど、三年間の聖女教育を受けて学園へ転入してきた彼女は、その辺の貴族よりも淑女だった。



はちみつ色の瞳と、ピンクブロンドの髪がお似合いで、男性ではなくとも守ってあげたくなるような容姿なのに、お話をすると、とてもご自分を律していらして。


誰にも同じ態度で、一人一人を尊重してくれて。



学習にも熱心で、授業で同じグループになると、とても楽しい。考えたことのないような視点からの話も多く、とても勉強になる。聖女の見本の様な人。



だから解る。



トーマスを筆頭に、あの四人がエマ様に惹かれたことは。



……正確に言えば、あの四人だけではないけれど。


憧れている人達なんて、男女拘わらず星の数だ。



そしてまた、それをひけらかさない。と、言うよりも、あまり意識していないと言うか、もしや気づいてない?と言うか。



最近では、レイチェル=ボートー伯爵令嬢と、カリン=マーシル子爵令嬢と懇意にされている。



……いいなあ、と思う。



レイチェル様のお家も、カリン様のお家も、ビルのマーク家には届かないものの、かなりの大商会をお持ちだ。特にマーシル家。遠方の国との交流も盛んで、だからだろうか、貴族ではあるけれど、とても自由に見える。もちろん、いい意味で。レイチェル様も、それに近い。そしてお三方とも、婚約者はいない。



そう、エマ様も。



レイチェル様やカリン様はともかく、エマ様は聖女だ。


今はご本人にそんな意思は見えないけれど、国の事を考えれば、どなたか国の重鎮のご子息と、と陛下も考えておられるだろう。


おあつらえ向きに、歳が近いご子息が沢山いることだし。



エマ様、……トーマスを選んでくれたりしないかしら。


宰相の嫡男だし、能力だって高い。まあ、顔もいい。……女性関係はあれだけど、聖女様が相手となれば落ち着くと思うし。他の女性も、エマ様には絡まないでしょうし。聖女様とそうなったとなれば、お父様も諦めるでしょう。



……って、何を失礼な事を考えているの、私。



ローズ様が離れてから少しした頃から、あの四人はエマ様に絡み始めた。エマ様はかなり困惑して見える。……見えるのに、足がそちらへ向かない。クラスメートの皆も、きっと困っている。解っているの。解っているのに。



どこかで、エマ様をスケープゴートにしている自分がいる。



情けないわ。自分を嫌いになりそうよ。

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