前奏曲14
「この部屋は初めてですか」
キャンドルの灯りに照らされた部屋の中にミサねえさんの匂いが漂っている。
「どうして、ここにいるんですか」
ミサねえさんは僕の質問には答えずに壁に寄りかかったまま。半分夢を見ているような表情。普段のミサねえさんとは違う。
「今日はどうでした」
そういえば僕は今日何をしていたのだろう。同じような毎日を過ごしているから僕の記憶が曖昧になっているのだろうか。
「お父さんは罰が当たったの」
「お母さんもね」
ミサねえさんはそう言って微笑む。
「ヒナは知らないのにね」
「でも覚えてるのね、感覚で」
僕はお母さんのことは直接あいつからは聞いていない。
「あの子は時期が悪かったのよ」
「いちばん不安定な時期」
「そう」ミサねえさんは両手を前に出して目を閉じた。手のひらが僕に迫ってくるように思えた。ミサねえさんは誰と話してるのかな。
「あなた本当のお姉ちゃん知らないでしょう」
「まだひと月ぐらいだからね」
「もしかしたらずっとわからないかも」
「そうなの」
「知らない方がいいかもね」
僕はあいつと話したときのことを思いだしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます