前奏曲13
少しずつ僕はこの家の探検をはじめている。そして、鍵がかかっていて入れない部屋をいくつか発見した。ただし、僕が見つけた鍵では入れなかった。
「ここに住む前に掃除をしたのですが、入れなかったところはまだしていないんです」
「鍵がみつからなかったのですか」
「父から預かった鍵で入れなかった部屋には入っていないんです」
「窓が壊れていて外から入れた部屋とかは修理したのですが」
ミサねえさんが入れていない部屋と僕が発見した部屋が一致するかは不明だけれど、ほとんどの部屋は窓のない小さい部屋のようだ。
「納戸みたいなところ」
「そうですね」
まあ鍵屋さんとか呼べばすぐ開くんだろうけど、今のところ生活に支障はないので無理に開ける必要もないのだろう。
「今度二人でそのへんを整理してみませんか」
「今は暑いので、もう少し涼しくなってきてからではどうでしょう」
僕とミサねえさんは風呂上がりにカップのかき氷を食べている。僕はイチゴミルク味。ミサねえさんは宇治金時。浴衣姿のミサねえさん。控えめな色気。浴衣と言っても白地に紺の模様の入った地味なものだ。ミサねえさんらしい。それにくらべると、あいつは色気を安売りし過ぎだ。そこらじゅうに振りまいていたからな。僕も若かったってことか。
ただじっとしているだけで汗がだらだらと。急に電気が消えた。廊下側のドアから光が入ってくる。停電ではなく電球が切れたようだ。でも、替えの電球がどこにあるのかわからない。とりあえず懐中電灯かな。でもどこにあったかな、懐中電灯。そのへんのことはよく知らないんだよね。少なくても懐中電灯は確認しておかないと。夕立、雷の季節だし。配電盤の位置も。
「配電盤とブレーカーのことは業者さんから説明を受けました。明日案内します」
「いろいろと問題があったようで、それは直してもらいました」
それよりも電球のある場所はわからないのかな。ミサねえさんは少しも困っている様子はない。それよりもミサねえさんは少し眠そうだった。
「あいつとは話したんですか」
「話したのですが、あの子が何を言いたいのかよくわからなくて」
「そうですか」
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