第15話 予定(1)
僕が目を覚ました時、14時になっていた。
つまりは彼女の一方的な約束を破ったことになる。そこから急いで起き上がり着替える。慌ただしく階段を下り玄関を開けた。
………わけではない。一度12時に起きたが遅刻することをわかっていて二度寝をした。ゆっくり起き上がり一歩ずつ踏みしめながら階段を下り、玄関ではなく冷蔵庫を開けた。
ちなみに、寝巻きはジャージなので着替えていない。
そう、僕はもともと行く気がさらさらない。そもそも行くなんてこと一言も返していないのだ。
それに彼女の昨日の脅しは昨日しないことを知っている。何故なら僕は彼女に住所を教えていないから。家に来れるはずがない。
彼女には悪いが当初の予定通り今日は家でゆっくり休ませてもらう。
ピンポーン
冷房庫の中を物色しているとチャイムが鳴る。
とてつもなく嫌な予感がした。
いや、落ち着け彼女が僕の家を知るはずもない。彼女のはずがない。きっと宅配の人だろう。そうであってほしい。そうに決まっている。
ピンポーン
宅配の人には悪いけれど無視させてもらおう。万が一にも彼女であったら僕の大事な予定が狂う。
ピンポーン
…………………….
ピンポーン
ピンポーン、ピンポーン
「ああ、わかったよ!諦めて出るからもう押さなくていい。近所迷惑になるだろ」
諦めて僕は玄関のドアを開ける。そこにはどうやって僕の家を特定したのかわからない近所迷惑の張本人の白木さんがいた。
「あ、やっと出てきた。て、君尋くんジャージじゃん。さては約束すっぽかす気でいたなー」
手にコンビニのビニール袋をぶら下げた白木さんが元気に話す。
「言いたいことは沢山あるけど、取り敢えず上がりなよ。リビング空いてるから」
来てしまったものは仕方がないので家の中に案内する。
「わーい、お邪魔しまーす」
靴を揃えて上がる白木さんをリビングのソファーまで案内する。
「そこに座ってて、飲み物とってくるから」
「了解!あとこれ手土産。中にアイス入っているから今食べないなら冷凍庫に入れてくれないかな?」と袋を僕に渡す。
「…わかった。食べたくなったら言って」
「りょ!」
アイスを冷凍庫に入れながら早速僕は白木さんに気になっていることを聞いた。
「ところで、どうやって僕の住所知ったの?白木さんに言ってないはずだけど」
彼女は得意げに言う。
「ぼっちを極めている君尋くんとは違い私には人脈があるのだよ!……かなり不本意でもあるけれど、それで心中相手の君尋くんのことを知れるなら、まぁ?悪くないかもね」
「こっわ、個人情報漏洩してるじゃん」
「好きな相手のことは隅々まで知りたくなるって言ったら引く?」
「人らしいとは思う」
「ありゃ?私は人間失格なはずなんだけど」
左手を顎に当てて「ん?」と首を傾げる仕草をする。
いつもと違う姿のせいかいつもは感じないのに少し可愛く見えてしまった。
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