第14話 人間失格(2)

 人間失格を全て読んだ。これを白木さんだと思うのは無理がある様な気がしてならない。それが普通のことなのだろう。そう見える様に印象操作されているのだから。簡単に違いを並べれば彼女は薬なんてやっていないし、お酒も飲んでない。自分を批判しながら酔いしれてもいない。

 相違点なんて沢山あるに決まっている。彼女、白木小幸と太宰治は別の人間なんだから。

 でも、何かが似ているんだ。何か…。

 周りに取り繕っているところだろうか?モテているところだろうか?いや、違う。根本的に人を惹きつけるものがあるからだ。カリスマ性というのだろう。

 それに彼女は自分の見せ方をきっと知っている。

 頭をこれでもかというくらい動かしているとスマホに着信が入る。白木さんからだ。

『明日、空いてる?本屋行こう!』

『明日は布団の上にいるという予定があるかな』

『14時に前に集合したところに集合ね』

『来るまでずっと待ってるから』

 こういうところが太宰治に似てないところだ。あまりにも強引だと思う。いや、太宰治もこのくらい強引だった。考えを改めよう。あいつは女にいきなりキスをかます変態だった。

 初めの頃より彼女の印象が変わっているのは確かだ良い方か悪い方かはわからないがこの本を通じて彼女のことを考える時間が長くなってきているのは確かだ。

これも、彼女の思惑なのだろうか。それは何だか悔しい。

このまま彼女に引っ張られて心中してもおかしくなさそうだ。

常に彼女に振り回されている。さしずめ僕は太宰治でいうところの女かもな。

少しだけ鼻で笑った。

 またスマホに着信が入る。

『さっき送ったこと少し訂正』

『来なかったら迎えに行くからね』

 ………行動力も似ている。芥川賞欲しさに直談判しにいった彼と似ている。

 最近彼女のことが面白い気がしてきて何だか自分がおかしくなった様で、なんていうのだろう。何だろう、まあいいか、きっといつかわかる日がある気がする。

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