第13話 テストは義務です

 テストは学生でいる限り逃れられない義務である。テストの度に「死ぬぅ〜」とのたうち回っている学生の何と多いことだろう。同じくらい昨日勉強しなかった〜と言う人もいる。どこに行ってもどの年になってもこのやり取りはきっと変わることがないだろう。

これは学生の馬鹿みたいな伝統かもしれない。

「教科書をしまって来てください」

 先生の合図で皆が動き始める。

 最後の悪あがきもここまでくれば滑稽に見えるかもしれない。それでも、その人にとっては大事なことで頑張っているのだと思う。最後の最後まで先生に言われるまで見つめられる教科書やワーク。

それらを僕は早めに手放してしまう。

ギリギリまで見ていたいというよりは早く終わらせて忘れてしまいたいという気持ちの方が強いからだ。

勉強以外もだが、僕は色々なことを忘れてしまいたい。幼稚園の頃の無邪気さも小学校の頃の集団行動も中学の修学旅行だって、覚えている必要なんてどこにもない。

「僕は割と執着心が薄いのだろうな」

 小さな声で誰にも聞こえない様に言った。

 先生がテストを配っていく。

 さっさと解答を書いてこの答えも忘れよう。

 何も考えない。

それがきっと楽な生き方だから。まるで、太宰とは逆の考え方だな。



「やあ、君尋くん!テストどうだった?いい点取れそう?」

 いつも通り図書室に行くと僕が入った瞬間から迫ってきた。

「君はどうだったの?」

「質問を質問で返すとはいい度胸だ!………周りには”別にそんなに”て言っているよ」

 彼女はクルリと反対側を抜きながら両手を上げて肩をすくめた。

「僕には?」

 彼女は上げていた腕を後ろで組んで僕に伝える。

「そんなのどうでもいいじゃない」

 その顔は呆れている様でも何回も繰り返される質問に嫌な顔をする訳でもなく軽く微笑んでいた様に見えた。諦めているというのか、失笑しているといのか僕にはわからないけれどその顔が儚く見えたことが今後も忘れることなく、脳に焼き付いていることをこの時の僕には知らない。

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