第5話 私はピエロ

 私は道化にならなくてはいけなかった。それが正解だと信じて疑わなかった。私の弱い心を守るには何枚もの仮面で覆う必要があった。親にもその仮面は外せない。いや、外すことは絶対に出来ない。

親だからこそ隙をみせてはならなかった。親に見捨てられたら生きていけなくなる。そのへんの道路に置き去りにされたら衣食住を失う。

 親だけは失望させてはいけなかった。空気が悪くならないよう、痛い腹を突かれないよう、笑顔にさせてこちらを探らせないように。不信感を抱かせないように。


 私に出来るのはそれだけ。

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