第4話 人間失格(1)
学校はいつも通り退屈だった。
誰もいない教室で毎日の同じように考える。退屈なのが悪いことではない。むしろ僕にとってはかなりありがたい。
突然、白木さんのような人気者が僕の日常に入ってこられると退屈はがらりと姿を変え面倒事になる。
何だあいつ。から始まって変に目をつけられでもしたら困る。
僕にとって重要なのはクラスの人気者と関係を持つことではなく、退屈な日常に本というスパイスが混ざるだけで丁度いいのだ。
「おはよう君尋くん!」
例の人気者が来た。
「朝早いね、いつもこの時間?いや、どっちかっていうと君尋くんは時間ギリギリ勢だった気がする」
何でわかるんだ?
その通り僕はいつもギリギリに登校する。いつの間にかクラスにいることは割りと陰キャにしては重要なことだし出来る限りベッドから出たくない。
「あ!君尋くん人間失格よんでくれてるんだね」
「ん」
彼女の言う通り僕は今人間失格を読んでる。彼女に毎日読んでいるのか聞かれるのも面倒だからだ。
「面白い?」
「まだ、序盤の十頁くらいしか読んでないからわかんない」
「そっか」
彼女はその後自分の席に行ってカバンを下ろしてから他クラスに行った。
「他クラスに行くなんて人気者は楽じゃないな」
自分のクラスに仲の良い奴がいるわけでもなければ他クラスにいるわけもない。
そんな僕からしたらお喋りするために他クラスに行くなんて面倒事の他に当てはまるわけがなかった。
必要以上に人間関係を広げる意味もわからない。
人間関係が何よりも面倒なのはよくわかっているからだ。
考えに耽っていたらいつの間にかクラスは和やかになっていて僕がいつも登校する時間。ギリギリの時刻になっていた。
僕は本を閉じ外を見る朝の会が始まるまで。
それから僕は授業の合間や休み時間を使って人間失格を読んだ。
大庭葉蔵の幼少期は読んだ。今の段階から深い所まで予測することは出来ないが彼女が私を知ってもらうためのうちにこれも入っているならば、彼女は小さい頃から親の顔色を伺ってたということになるのだろう。
でも、葉蔵の幼少期はただのクソガキでもあった。
『何が欲しいと聞かれると、途端に何も欲しくなくなるのでした』
拗らせている。
彼女もそんな幼少期だったのか?
全く想像がつかない。
小説を読むのにこんなに時間をかけるのはいつぶりだろうか。
ただ読むだけでなく、彼女のことを知らなくてはいけないとなると嫌でも時間がかかる。
彼女の性格からして毎日詮索してくるのだろうから、適当に読むことができないのがキツイと感じる。
今日は図書室に行くことはないから絡まれることはないと思うが彼女を気にして自分が振り回されていると思うとさっさと読み終えるべきか、心中させないために読み終えないべきか帰り支度をする中迷っていた。
土日はゆっくりしよう。心に固く誓った。
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