第4話 神

 20日後。

 朝。

 エルヴィン、近衛騎士団団長グレーテル、親衛隊長官ルイズ、宮廷警護隊総帥ソフィア、そして、近衛騎士3000名が、エルドラドに到着した。


 エルドラドはヴァリス王国の北部に位置し、東のゲルマニア帝国、西のガリア竜王国と隣接している。


 ここに邪竜リヴァイアサンは二千年前にふいに飛来し、以後、このエルドラド一帯を縄張りとしてきた。


 エルドラドには金山、銀山、ミスリル、アダマンタイトなどがある肥沃な大地である。


 古代において、ヴァリス王国、ゲルマニア帝国、ガリア竜王国は、幾度もエルドラドを領有支配すべく、軍隊を率いて邪竜リヴァイアサン退治に挑んできた。


 だが、ことごとく失敗に終わった。


 ヴァリス王国も300年前に、三万の軍隊を率いて邪竜リヴァイアサンを討伐するべく挑んだ。


 だが、3万の軍隊の内、2万人が邪竜リヴァイアサンによって殺害され惨憺たる敗北を喫した。


 以後、ヴァリス王国は邪竜リヴァイアサンの討伐を断念した。

 エルヴィン一行の前に、邪竜リヴァイアサンのすむ巨大な山が見える。


「毒の瘴気が強く、これ以上、進むのは困難かと……」


グレーテルが進言する。

 リヴァイアサンの発する毒の瘴気が、山全体を覆っていた。


「俺が一人でいく。卿らはここで待機せよ」


 エルヴィンが、馬をすすめる。 

「陛下! それはなりません! 私も参りますわ!」


  親衛隊長官ルイズが、いつになく真剣な顔で言う。


「わ、私も、行きます!」

 宮廷警護隊総帥ソフィアも言う。


「陛下、お一人ではあまりに危険です」


 近衛騎士団団長グレーテルが、進言する。


「卿らの忠告と忠義はありがたい。だが、俺は大丈夫だ。ここで待機せよ。これは王命だ」


 エルヴィンが、命じる。

 王命という言葉に三人とも押し黙る。

 国王たるエルヴィンの権威は絶対である。

 ルイズでさえも、『王命』という言葉の重みに身の程を弁えた。


「心配は要らぬ。俺の強さは卿らも知っているだろう?」


エルヴィンが、優しい声を出す。


 近衛騎士団団長グレーテル、親衛隊長官ルイズ、宮廷警護隊総帥ソフィアが、顔を見合わせる。


 そして、三人の美女は互いに頷いた。

 エルヴィンの超常とも言うべき強さは側近である彼女達が一番良く知っている。


「ご無事の帰還をお祈りしておりますわ」


 親衛隊長官ルイズが、代表して言う。


 エルヴィンは頷くと、白馬を進めた。

 




邪竜リヴァイアサンの棲む山にエルヴィンが登っていく。 

 エルヴィンは毒の瘴気から魔法障壁で身を守りつつ進んだ。

 愛馬である白馬は怯えていたが、エルヴィンの命令に従い、歩みを止めない。


「良い子だ」


 エルヴィンは愛馬を褒めて首を撫でる。

エルヴィンと白馬はともに山を登り続けた。


 3時間後。


 邪竜リヴァイアサンが空を飛んでいるのが見えた。

 エルヴィンの魔力を察したのだろう。

 邪竜リヴァイアサンが、エルヴィンの前に降り立った。

 体長50メートルをこえる巨大なドラゴンが大地に着地し、地震のように大地がゆれた。

 エルヴィンの乗っている白馬が怯えて恐怖で震える。


「人間の小僧。ワシの住み処に何をしに来た?」


 邪竜リヴァイアサンが、俺を見下ろす。

 ドラゴンの巨大な牙が口からのぞいた。


「お前を倒しに来た」


 エルヴィンは簡潔に答えた。


「ワシを倒すだと? 古代竜(エンシェント・ドラゴン)であるワシを下等な人間ごときが、倒せるとでも思うのか?」


邪竜リヴァイアサンは、哄笑した。


「ああ、思っている。だが、戦う前に交渉がしたい。二度とエルドラドに近づかないと約束してくれないか? 今すぐに消えれば、俺はお前を見逃す事を約定しよう。過去に我がヴァリス王国の国民を食い殺した罪も赦免してやる」


 エルヴィンが、邪竜リヴァイアサンを見上げながら言う。


「ふざけるな小僧!」


 邪竜リヴァイアサンは激高した。

 人間の分際で、古代竜である自分に対してなんという口の聞き方だ。


「下等な人間の分際で、大口をたたき折って、不遜な小僧が! 八つ裂きにしてくれるわ!」


 邪竜リヴァイアサンが、殺意を宿してエルヴィンに襲いかかる。


「交渉決裂だな」


 エルヴィンは、無詠唱魔法を行使した。


【冥府の石槍】


巨大な石の槍が出現し、邪竜リヴァイアサンの胸を貫いた。


「な、なんだと?」


 邪竜リヴァイアサンは口から血を吐き出した。

 邪竜リヴァイアサンの口から大量の血液が滝のように流れ落ちる。

 邪竜リヴァイアサンの全身が痙攣した。

 巨大なドラゴンは信じられないような瞳でエルヴィンを見る。

 やがて、邪竜リヴァイアサンは横に倒れた。


 ズシン、と巨大な音が響く。 

 地面が揺れた。

 邪竜リヴァイアサンは絶命した。


「悪いな。俺には神から与えられたチートスキルがあるんだ」





 俺は前世で、日本人の男性だった。


 その記憶を思い出したのは現世において、5歳の時だ。


 俺は前世の死後に神に出会った。


 前世の俺は日本の田舎の生まれで、家に小さな神社があった。


 いわゆる屋敷神(やしきがみ)だ。


 神は俺の生前の善行の数々を褒めてくれた。


 そして、俺が毎日、神社にお供えをし、境内を清掃した事を感謝した。


 その褒美として、神は俺に様々なチートを与えてくれた。


 【全属性魔法能力】【無限に等しい魔力】【万能の天才】【強運】、その他もろもろ。


 俺は生まれながらにして、圧倒的なチートスキルを持っているのだ。

 邪竜リヴァイアサンといえども、敵ではない。

 









 






  

 

 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る