第3話 進軍
エルヴィンは、玉座の間に入った。
玉座に腰掛け、すぐ後ろにルイズとソフィアが警護役として控える。
エルヴィンは侍従に、
「近衛騎士団団長グレーテルを呼べ」
と告げた。
20分後。
近衛騎士団団長のグレーテル=フォン=マーラーが来た。
グレーテルは、17歳。
伯爵家の令嬢で、長い赤髪と赤藤色の瞳をした美少女だ。
身長が高く、胸が大きく、腰が細い。
グラマラスな肉体の美少女である。
「じゃ、邪竜リヴァイアサンを討伐するのですか?」
主命を聞いたグレーテルが、驚く。
邪竜リヴァイアサンは最強種の一つ、古代竜(エンシェント=ドラゴン)だ。
かつて三つの国を滅ぼし、数十万の人間を虐殺した大怪物である。
邪竜リヴァイアサンは、ヴァリス王国の北部、エルドラドと呼ばれる地帯の山に棲んでいる。
エルドラドは、どこの国の領土でもない。
邪竜リヴァイアサンが強すぎて、領有支配できないのだ。
ヴァリス王国とその周辺国家は、
「邪竜リヴァイアサンを討伐した国が、エルドラドを領有する権利を得る」
という条約を締結している。
つまり、エルヴィンが、邪竜リヴァイアサンを退治すればエルドラドをヴァリス王国が占有して、領土にする事ができるのだ。
「エルドラドは豊穣の大地だ。 金山、銀山、オリハルコンやアダマンタイトの鉱脈があり、農耕に適した肥沃な大地が広がっている。エルドラドを領有すれば、我がヴァリス王国の国力が、飛躍的にあがる」
「た、確かに陛下のおおせの通りでございますが……」
グレーテルが、戸惑いながらいう。
玉座の後ろにいるルイズとソフィアも、戸惑いながら視線を合わせる。
「すぐに出発するぞ」
エルヴィンが歩きだす。ルイズとソフィアが、少し慌ててエルヴィンの後に続く。
「す、すぐでございますか?」
グレーテルはあわてて近衛騎士団3000名を招集した。
近衛騎士団は、ヴァリス王国の最精鋭軍団である。
全員が、職業騎士であり騎馬兵として戦う事ができる。
王城の前の広場に集まった近衛騎士3000騎は騎乗して整列し、若き国王エルヴィンを迎えた。
エルヴィンは、愛馬の白馬に跨がり、
「これより、邪竜リヴァイアサンを討伐する。エルドラドを我がヴァリス王国の国土とするのだ」
と宣言した。
近衛騎士団3000名は、全員、驚愕し、戦慄した。
邪竜リヴァイアサンは天災に例えられる怪物である。
人間が戦って勝てる相手ではない。
だが、エルヴィンが白馬を走らせると、全員が黙って従い、騎走し始めた。
近衛騎士達は、国王に対する絶対の忠誠を誓っている。
逃げる者も、不平不満を口に出す者も一人もいない。
近衛騎士団団長グレーテル、親衛隊長官ルイズ、宮廷警護隊総帥ソフィアも同様であり、彼女達もエルヴィンの後に続いて馬を走らせた。
ヴァリス王国の軍旗である【黄金の有翼獅子(グリフォン)】が、風にはためいた。
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