第8話 次の仕事が待っている
「モグ、牛乳屋さん辞める」
「うん、わかった」
「それでこれ、タウンワーク貰ってきた」
「少し休んだら?今日、明日の生活に困っているわけでもないんだから」
「仕事してると辛いけどしてないのはもっと辛いんだ」
「でも何やっても上手くいかない……お気の毒さま」
「何か、僕にでもできる仕事があるはずだよ。派遣に登録してみるよ」
「自分で派遣で納得がいくのならいいんじゃない」
「そうしよう。電話する。でも派遣会社いっぱいあるもんね」
「タウンワーク見て決めたら?」
「決めた。ここにする」
「え?!はや」
「気持ちの切り替えだけは早いの。電話するから黙ってて」
「あ、こんにちは。タウンワーク見て電話しています山口と申します。はい。いつからでも働けます。登録は初めてです。このフィルターの製造を希望しています。山本町です。場所はわかります。1Fがラ―メン屋ですよね?え?カレー屋…そうでしたか。え?ラ―メン屋は隣ですか!やっぱりあの辺ですよね。履歴書いらない?!なるべく早い方がいいです。金曜日の13:00に会社ですね。ありがとうございます。宜しく御願いします。失礼します」
「モグ、派遣決まったよ」
「派遣社員に決まったと喜んでいるのはあなただけよ。なんか無邪気な子供みたいで抱きしめたくなる」
「いいよ、モグ。だきしめても。その代わり履歴書買うから200円頂戴!」
「あんたね、バカにしないでよ!履歴書いらないって言ってたでしょ?」
「……派遣社員祝にビール買いたいなあと
思って、50円はあるけど……」
「日本中、どこ捜してもそんなことでお祝いしている人はいません」
「モグ、いいか、派遣社員は確かに非正規雇用ではある。会社に取っては流動性のある雇用ができるので重宝される。では派遣社員のメリットはないのかという点だ。労働需要のない会社からある会社へとシフトチェンジできる。景況に合わせて会社を返れるというメリットがあるんだ。今や派遣社員のデメリットは賞与がない点だけに絞られるといっても過言ではない」
「………モグ1からの長い付き合いだけど、バカなのか天才なのか判断しかねるわ!」
「まあ、僕は派遣社員になります。そしてフィルターを沢山作ってどうするんだろ?ね?」
「知らない。でもフィルター作ればお金いただけるんだから作ればいいじゃない」
「そうだね。あとは派遣社員が考えることではないもんね」
「そうそう」
「モグ、ラフな格好で来てください。って言われたけど服がない」
「ここ1年間、牛乳ばかり飲んでたから太ってウエストが小さいんだ」
「うん。じゃ今から古着屋に行こうか?」
「いこう、いこう」
──────────────────☆
「何色がいいの?」
「おとなしめでしょ、面接だから」
「じゃ、紺色でウエストと丈が合うものを選んでいこう!」
「は~い。いくらまで?」
「1000円まで!」
「それならけっこうありそうだぞ!」
「This This This」
「お前はマイケル・ジャクソンか!」
「はい、試着して」
「うん」
「500円。ポ―ルスミスか!ウエストはいいか。丈もいいね。ポケットは……」
「モグ、モグ」
「はい、問題なさそう?」
「ある」
「え?!」
ひそひそ声で
「ポケットに500円玉がはいってる」
「え?!買いなさい」
「うん、ラッキーズボンだ。実質0円。
これで立派な派遣社員になれること間違いなしだ」
当然その500円玉はお祝いビールへと変化した。
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