第7話 牛乳配達

 配達は朝6:00までに配達する朝配とお昼15:00までに配達する昼配があった。


 池田さんが朝配して仮眠取って営業回りしているのは知っていた。それでいつもきつそうだった。中田さんは免停中だから配達できない。矢野さんは配達するなら辞めることを公言していた。それで社長と僕に配達命令が下された。僕は朝配で池田さんからルートを引き継いだ。社長は昼配でこれも池田さんから引き継がれた。


 この時くらいからすべてが壊れ始めた。

 僕は月・金、朝配してそのまま営業回りをした。配達に時間を要したので仮眠時間は取れなかった。サンプルの牛乳で飢えを凌ぎ、午前中は車の中で寝た。午後から営業回りしたがもう気持ちが乗らなく0契約が続いた。社長も痛風の痛みをこらえて配達していた。

何かもう決心した顔つきをしていた。


 追い打ちが掛かった。


 僕と池田さんに森社長から朝配が終わったら本店まで来て本店近くの営業回りをしろというものだった。本店まで1.5hはかかった。0契約の嫌がらせとしか思えなかった。それでも半月は我慢したが、もう壊れそうだった。それで営業先から連絡した。


「山口です。はい(常務:奥さん)もうやめます。あなたそんなこと電話で言うことですか?事務所で社長に言いなさい!!!ガチャ」


 それで社長にあと1回言ったと思うが思い出せない。

 支店の社長も辞めた。メールをくれた。


「山口さんをブラック企業に採用してごめんなさい。先方が何か言ってきたら証拠を取っておいたほういいですよ。山口さんならいい仕事に就けますよ。頑張ってください」


 僕は離職票がほしかったので要求したが無視されたのでことの顛末を記し、労働基準監督署に提出した。すると先方は本店回りの営業で記した帳票を出せと反論してきた。僕が営業回りをしてないとよんだのであろう。その通りだ。しかし監督署なんか誰か死なないと何もしてくれないとつくづく感じたよ。何も解決しないまま月日が経った。



 みんな元気だろうか?僕は転職が多いからそう思う人も多い。女子学生だった子はお母さんになっているね?ご年配の方は特に心配だよね。飲食店で出会って結婚した子たちもいたな。地方局のアナウンサーになった子はどうなったのかな?中継見てたら寿司を醤油も付けずに食べたから注意したの覚えている。


 ちょっと高級なス―パ―にいけば今も酪農ファザ―ズは並んでいる。生乳、飲むヨ―グルト、カルエ―ス。みんな美味しい。でも美味しさを表現するのは難しいよね。


「こちらの商品、普通のよりちょっと濃いです」


「モグ、それじゃ契約とれないよ」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る