第12話
夕方、正人さんが仕事から帰宅する。
先ずは私は怒ってますオーラを全開で放つ。
正人さんとのつき合いも長いが残念な夫はかなり鈍感だった。
そして辛いのが苦手な正人さんにだけ激辛の麻婆豆腐を作ってあげた。
正人さんの顔が真っ赤になっていくのが面白い。
ホントに私って嫌な性格だと思う。
ここまでやればいくら鈍感な正人さんでも私が怒っているのを気づく筈だ。
でも正人さんは「今日の麻婆豆腐辛いね? 」って何も気がついて無いみたいな素振りをしていた。
この鈍感男を理解するのは私には無理なんだろうか?
どうしようかと思ったが食卓には子供達も居るのでKakuyomuの話しはしなかった。
仕方なく、何か話されても無視し続けたがソレは正人さんにとって都合のいい事の様だった。
「もう、今日は寝る! 」
私はふて寝するしかなかった。
翌朝、『今日は正人さんをどうしてやろうか?』なんて考えながら起きたがなんだかダルい。
熱は無い様だが、朝から気持ち悪く感じる。
まさかコロナウィルスに感染してしまったのか?
熱が無いのにクリニックに行くのはどうなんだろうか?
薬局に行って検査薬を買って来る事にした。
私は検査薬の説明書を見ながら薬のパッケージを開けた。
検査薬はオシッコをかけて反応を見るタイプだった。
・・・ん?
以前、別の種類の検査薬でそんなのがあったのを思い出す。
私は説明書の内容に沿って検査した。
あれ、おかしいな?
検査結果は陽性だった。
私はもう一度パッケージの内容を確かめた。
そしたら重大な間違いをしている事に気がつく。
私が買って来たのはコロナウィルスの抗体検査キットでなくて、妊娠検査薬だった。
私は「ふぅ」とため息をつく。
そして、「なんで私、妊娠してるんだ? おかしいだろう? 」と自分自身に問いかける。
そして私は12月のある日の事を思い出した。
「あっ、アレ夢じゃなかったんだ? 正人さんに本当に襲われていたんだ!」
今の状況を理解した私は、お腹に触れてそこに居る新しい命のこれからを考えた。
「これからこの子が大人になるまでの20年、まだまだ忙しい日が続くなぁ。正人さん、今まで以上にこき使ってやるから覚悟しておきなさい。」
私は正人さんにこの事を報告した。
残念な夫 アオヤ @aoyashou
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