第10話

世間はクリスマスでお祭り騒ぎ。

今年ももう少しで終わりだ。

まだコロナウィルスの終焉は訪れていないのに、人々は緊縮なんて言葉は過去の事であるかの様に新たな年を待ち焦がれている。


正人さんは今日は忘年会だ。

去年一昨年と出来なかったから今日は羽根を伸ばしまくっているのだろう。


今日の私は体調不良だ。

生理不順も続いている。

これっていわゆる更年期障害なんだろうか?

もうすぐ私は女というモノから卒業するのか?


今日は正人さんを待たないで寝てしまおうと思う。

時計はまだ午後10時頃だが私はもう布団にもぐりこんだ。

やがて吸い込まれる様に眠りの世界に落ちていった。


暫くして何かが私の頬をさすり、髪を撫でている様な感覚が伝わってくる。

頬には柔らかい何かが触った。


ウッ、酒臭い。

私は目を開けようとしたが身体が動かない。

たぶん正人さんが帰ってきたのだろうと思うが・・・

私の身体をピクリとも動かす事が出来なかった。

そのうち酒臭い唇みたいなモノが私の唇と重なった。

「正人さん、辞めてください! 」

言葉に出そうと試みたが私の身体は全く動かなかった。

私は全く抵抗できない。

・・・私、もしかしたら襲われちゃう?


その時は何故か恐怖は感じなかった。

代わりに『メンドクサイ! 』って感情が湧いてきた。

私を襲おうとしているソレは私の布団に入って来て私の温もりを噛み締めているみたいに感じる。

十数年前に感じた懐かしい感覚だった。

私はその懐かしい感覚に溺れる様に気を失った。


翌朝、普通に目を覚ます。

私の着衣の乱れはなさそうだ。

隣りでは正人さんが寝息をたてている。


昨日、私が襲われた感覚は夢だったのだろうか?

正人さんを起こして確認した。

私はうなされていたみたいだった。

アレは夢?

私は一体どうなってしまったのだろうか?

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