第9話
小さい子供二人の世話は想像以上に大変だった。
あんなにこだわってた正社員も続けるのは無理と判断して結局辞めてしまった。
私は知り合いのツテを辿ってパートで働き出す。
その職場は癖が強い出来の悪い職人みたいな人のたまり場だった。
しかも私はパートの事務員という身分なのに休日出勤したり、仕事の打ち合わせで出張させられたり・・・
なんだかブラックな感じの職場で私のフラストレーションは溜まっていく。
でも知り合いのツテで仕事を始めてしまったので、辞めるのは言いづらい。
結局、この職場で10年間も働き続けている。
仕事が終わるとパート勤めなのにくたくただ。
家に帰るとついつい正人さんにあたってしまう。
でも正人さんだって家に帰れば家の事をするのは当たり前だ。
私だけが一人で家事をするなんて絶対おかしい。
『なんで女だからって家事を押し付けられなきゃいけないの?』
今日も夕飯を作りながら自分自身に問いかける。
正人さんは最近私に構って貰えない代わりに娘たちに構ってもらってるみたいだ。
私が娘たちにガミガミ言うもんだから、私には近寄らない代わりに正人さんにあまえている。
正人さんはある時から私に構って貰いたかったのか、自分で自分の事をまぁ~くんと呼ぶ様になった。
当然私は無視した。
しばらくしたら、下の娘が「まぁ~くんおいで! 」なんて友達を呼ぶ様に父親に声をかける。
「まぁ~くんって呼んでもらえて良かったね。」
私は哀れな目で残念な夫を見つめた。
そして夕飯の準備の為、キッチンに一緒に居る正人さんに頼んだ。
「ほら、夕飯の準備して! 食器をだして!」
正人さんは誰もいないのに誰かがそこに居るかの様に命令する。
「ほら、早く食器を出して夕食の準備をしろ! 」
そして自分で返事する。
「分かりました、今すぐ用意します。」
馬鹿馬鹿しい事してる正人さんにとりあえず聞いてみる。
「何やってるの? 」
「瑠美さんには召使いが居るのに俺には居ないなんて悲しいじゃないか?」
正人さんは悲しそうな目で私をみる。
「ふぅーん、楽しそうでいいね?」
付き合ってられないので突き放すように私は言った。
そして正人さんを見て『はぁ~! 』ってまたため息をついた。
「そんなに仕事が大変ならパートなんだから辞めちゃえばいいだろ? そして最近は高校生が自分で曲作ったりして印税稼いでるみたいだから、瑠美さんも何か印税を稼げる様な仕事するとか・・・」
私はもう一度ため息をついてしまった。
「そんな才能有る訳無いじゃない! 」
「そんなの分からないよ! 自分自身の才能なんて自分じゃなくて他人が判断するものだよ。」
正人さんは真面目な顔で私の事を見つめた。
そんな目で見られたら・・・
「そうね何かチャレンジしてみるわ! 」
とりあえず気持ちを切り替える事にした。
その晩、私はパソコンを開いてネットを観ていたらweb小説というのを見つけた。
お試しで何か投稿して見るのも悪くないかな?
そんな軽い気持ちでkakuyomuってサイトに投稿することにした。
正人さんが以前ネットで私の悪口書いてたから、今度は私が正人さんのダメさ加減を書いてあげるわ。
もちろん正人さんにはナイショで!
そうね~ 『残念な夫』なんてタイトルにしようかな?
正人さんのダメなトコロとなると意外とすらすら出てきた。
よし、頑張るぞ!
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