第5話

躾では『飴と鞭』をバランス良く使い分けなければならない。

そうしないと・・・

直ぐに夫婦は赤の他人に成ってしまう。

そこだけは注意しながら躾しないといけない。


「ほら食器を洗って!」

夕食を食べ終わって一息つきたいところだけれど、余りゆっくりしていると動くのが億劫に成ってくる。


正人さんがシンクに溜まった食器を洗い、私が水切りラックに置いていった。

決して息のあったやり取りとはいえないが、並んで作業していると夫婦している気分にはなる。


「お風呂入った後、コーラ飲みたいでしょ? ソコの自動販売機まで行って買ってきてくれる? 私、化粧を落としたら外に出たくないんだ! 」


彼は余り欲しそうでなかったが「しょうがないな! 買って来るよ! 」って小銭を手にして出かける準備をした。


「ウン私、先にお風呂入ってるから後から入って来て! 」


彼が後から入って来ると思うとドキドキしたがそんな素振りしたら私の負けだ。

私からリードしていかないと正人さんの躾にならないじゃない!


私の初めては正人さんだった。

そして正人さん以外の男性と生涯関係を持つつもりなど無い。

実は私、セックスなんて子供を作る為の単なる儀式だと思っている。

セックスしている最中は気持ち良くない訳ではないけれど・・・

なんだかギャンブルと一緒で終わった後が虚しく感じてしまう。


私は終わった後も一緒に温もりを味わって余韻に浸りたいのに、正人さんは直ぐ寝てしまう。

私は少し興奮が収まるまでなかなか眠れない。

隣りですやすや寝ている正人さんを見ていると男と女の感覚の違いを感じる。


それに病気のリスクや健康のリスク、セックスなんてリスクだらけだ。

子供二人くらい造ったらもういいかな?

セックスなんてそんな位の行為だ。



正人さんがコーラを買って帰って来たみたい。

もうお風呂入って来るかな?

私は少しドキドキしながらバスタブに浸かりまったりしている。


「入っていいんだよね? 」

正人さんは入るのを少し躊躇っている様に扉を開いた。


「どうぞ! そうしたかったんでしょう? 」


正人さんにジッと見られているのが恥ずかしかったので・・・

「ほら、身体が冷えちゃうから、バスタブ狭いけど一緒に入ろう。」

って狭いバスタブに丸まりながら並んで入った。


こんな時二人で何を話せばいいかドキドキして全く思いつかない。

やがて冷たかった正人さんの身体が温かく成ってきた。

正人さんは私の眼をジッと見つめている。

その正人さんの眼の中で私が恥ずかしそうに微笑んで居るのが写って、余計に恥ずかしく成った。

恥ずかしさを隠す為に思わず私は正人さんに抱きついてしまった。

「野良猫みたいに毛づくろいしていいかな? 」


「バカ、何言ってるの?」


その後、正人さんが言っていた野良猫のイチャイチャみたいに二人で温もりを確かめあった。



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