第4話

夫婦生活なんて血の繋がりの無い者同士の共同生活。

だからこそストレス無く毎日過ごせる様にしていきたい。

その為にも正人さんを私がストレス感じない程度に躾けなければ・・・


私は残業を終えて9時頃に帰宅した。


洗濯物は取り込んであったが洗濯かごに山盛りになっていた。


「ねぇ、洗濯物は取り込んだら畳んで置かないとシワクチャになっちゃうでしょ? 」


私は疲れて帰って来たのにその惨状をみて更に疲れが増した。


「この間、俺が畳んだら畳み方が違うって怒っていたじゃないか! いちいちそんな事で怒られるならやらない方がマシだよ。」


彼から投げ捨てられる様に言われ私はハッとした。

このままじゃ正人さんの躾が・・・


「ごめんなさい。残業して来て疲れてて、私つい・・・」

正人さんの顔は私のその言葉で少し和らいだ様に見える。


「お疲れ様、ご飯にしよう。」


「ゴメン、顔だけ洗ってきていいかな?」

私はどうしてもファンデーションだけは落としてリラックスしたい。


「分かった。準備しとくよ。」

正人さんは慣れない感じで食事の準備をし始める。


食卓には細切りピーマンの肉炒めが置かれた。

そしてご飯と味噌汁とリンゴの欠片が・・・


初めて一人で造ったにしてはそれなりにカタチには成っている様に思う。

私は顔を洗い終えて席に着く。

「正人さん、初めてなのに頑張ったね。いただきます。」

私は細切りピーマンの肉炒めを口に運んだ。

けっこう塩っぱかった。

それにピーマンの種が取りきれて無くて少し残っている。

味噌汁は味噌が少し溶け残っていてやっぱり塩っぱい。

私は思った事をすぐ口にする悪い癖がある。

「ねぇ、少し塩っぱいよ。醤油は足さなくていいから! それにピーマンの種はキチンと取らないとね。」


正人さんは私のその言葉にぶすっとする。

「今度は気をつけるよ! 」

食事中は正人さんは殆ど話さなかった。

話しているのは私ばっかり・・・

でも、正人さんは私の事を分かってくれていると思いたかった。


正人さんがポツリと言った。

「『男と女ってどこまでいっても分かりあえない部分が有る』ってラジオで言ってた。そんな事ないよね?」


私は少しドキッとしながらも顔に出ないようにした。

「そんな事無いよ。私は正人さんが大好きだもの・・・」


「そうだよね。今日ね、仕事で訪問した家で猫を見かけたんだ。その猫は茶虎のいかにも野良猫って感じだった。毛並みが悪くて貧相でそして・・・ 」


「そして・・・? 」


「まるで熱せられた鉄板にお座りしたみたいにお尻周りの毛が抜けて赤くなってた。」


「そんな猫が居たんだ? 」


「そして俺の足元を長毛の優雅なサイベリアンが茶虎の野良猫の方へ歩いて行ったんだ。」


「ふ~ん、そんな猫が居たの?」


「そして二匹はお互いを毛づくろいしながらイチャイチャしだした。」


「まぁ~ 猫だからね。人間と違って身分とかで差別しないよね?」


「俺はあの猫が羨ましかったんだ。」

正人さんの懇願する様な目に私はハッとした。


「分かったわよ。いっしょにお風呂入ってその猫みたいに毛づくろいしたいんでしょ?」


「ダメかな・・・?」


『男なんて何歳になっても中身は子供だ』という人が居たがこの人もそうなのかもしれない。


「分かったわよ! その前に食器を洗って片付けちゃいましょう?」

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