「俺はあいつの思考なら、だいたい分かるさ」

 お爺様の従兄いとこであるデニーク大叔父おじ様は、大変な冒険家でありました。顔が広く、すぐにお爺様がどこに遺産を隠したのか、当たりをつけたようでした。

 トレジャーハンターである友人たちを自宅の屋敷に招き、世界地図を広げました。

「俺はあいつの思考なら、だいたい分かるさ」

 大叔父様は、地図を指差しながら言いました。

「ここだ。海辺にある、この別荘に、奴は遺産を隠しているはずだ」

「おおーっ!」と、トレジャーハンターたちから感嘆かんたんの声が上がりました。

 得意気に、大叔父様は鼻を鳴らしたものであります。

「他の者に先おこされる前に、すぐに行こう。ここから、そう遠くない場所だ」

 そう言って、大叔父様は仲間たちと共に目的の場所へと向かったのでありました。


 そこは、海辺の崖の上に建ったお爺様の別荘でした。

 当然、建物には鍵が掛かっております。

 トレジャーハンターたちは困って、顔を見合わせました。

「ドアをぶち破るか?」

「そんな必要はないさ」

 大叔父様が前に進み出て、懐から何やら取り出しました。

 それは──鍵の束でした。

「そいつは?」

「生前、奴に預けられたのさ。ここを調査地に選んだのも、そのためだ。別荘や屋敷の合鍵を俺は貰ってたんだ」

「なるほどなぁ」

 トレジャーハンターたちは頷いたものです。同時に、楽勝でここまで辿たどり着けたことで気が抜けているようでありました。


──カチャッ!

 鍵束の中から順番に鍵をしていったところで、ようやく別荘の扉が開きました。

 トレジャーハンターたちは別荘の中に雪崩れ込み、家探しを始めました。他人の家でしたがお構いなく、棚のものをひっくり返して床に投げ捨てました。

 大叔父様は意に介した様子もなく、フカフカのソファーに腰掛けて一服を始めました。

「何かあったら言ってくれ」

 端から、探す気などないようです。

 面倒な仕事はトレジャーハンターたちに任せることになっているのでしょう。


「来てください!」

 しばらくすると、建物の奥を調査していたトレジャーハンターから呼ぶ声が上がりました。

 大叔父様はゆっくりと立ち上がると、声のした方に向かいました。


 壁に、大きな穴があいていました。

「これは……」

「隠し扉だな」

 驚くトレジャーハンターたちを尻目に、大叔父様は淡々と言いました。

「あいつらしい。遺産は、この中にあるということだな」

 そして、大叔父様はトレジャーハンターたちに目配せをしました。

 トレジャーハンターたちは頷くと、壁に掛けてあった燭台しょくだいを手に取って火をともしました。

 先を照らすと、真っ暗闇──階段が下方へと続いているのが見えました。その深い闇に、トレジャーハンターたちは思わず息をんだものであります。


「いくぞ」

 大叔父様に促され、トレジャーハンターたちは恐れつつも迷宮の中に足を踏み入れたのでありました。

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