「だから、俺も力を貸してやろうと思ってね」
カールの家は、メキシコの
そんなカールの家の二階の部屋を
来客があったようで、カールはその応対をずっとしていました。
私は呆れてしまいます。
お爺様の遺言を聞いて帰ってすぐ飲酒など──まぁ、人の好き好きですから文句を言うつもりはありませんが、何だか複雑な気持ちになっていました。
◇◇◇
「悪いねぇ、急に押しかけたりして」
「いいや、構わないさ」
メキシカンハットを被ったちょび
「しかし、お前が飲みに来るなんて随分と久しいなぁ。俺の
「いやいや、そんなつもりはないさ!」
カールに睨まれると、メキシカンハットの男はハハハッと苦笑いを浮かべてお酒の
「いやね。風の噂で聞いたんだよ。お前も辛い時だってさ。だから、俺で良ければ協力してやろうと思ってね……」
「協力だぁ?」
「あぁ……」
メキシカンハットの男はそこで言葉を切ると周囲を見回しました。誰も聞き耳を立てていないことを確認すると、声を
「遺産の話って奴だよ。聞いた話じゃ、見付けた奴に遺産を渡すって話じゃないか。だから、俺も力を貸してやろうと思ってね」
「……そうかい」
カールは溜め息をつくと一気に酒瓶を飲み干しました。そして、空になったグラスをテーブルの上に置きました。
「狙いは、じいさんの遺産って訳か……」
カールが機嫌を
「いやいや、そうじゃないよ! あくまでも、俺はお前のことを心配してだね……そう、協力してやろうって言ってるんだ。俺は弁護士だし頭も切れる。何か情報をくれれば力になれると思うんだ……」
「協力者は必要ない。帰れ」
「そんなことを言わないでくれよ! 俺とお前との仲じゃないか。何か少しでも情報をくれよ。取り分は九対一でも構わないから……」
まるで
「帰れっ!」
カールはそれを
「なぁ! 情報だけでもいいんだ! くれよ。遺産はどこにあるんだ!?」
「失せやがれ!」
カールはメキシカンハットの男の衣服を掴んで引き
それでもメキシカンハットの男は食い下がらず、「なぁ!? 一つだけ。一つだけでいいんだ!」としつこく聞いてきたので仕方なく、カールは男をドアの外へと蹴り飛ばしてやりました。
地面に転げたメキシカンハットの男が起き上がる前に、カールは乱暴に扉を閉めると、ガチャリと鍵を掛けたのでありました。
そして、ドアに張り付いて立つと、カールは息を吐きました。
「……悪い奴じゃなかったんだがな……。さようならだ……」
誰ともなしに
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