第53話

「美穂さん、これでいいですか」

「だめでしょ?美穂さん、じゃなくてママでしょ?」

「うぅ......ま、ママ」

「うふふ、嬉しい。さぁ、いらっしゃい」


 美穂さんの胸に......ママの胸に吸いこまれてしまう。

 

 柔らかくて、ふかふかしてもう抜け出せなくなってしまう。


「いいこ、いいこ」

 

 愛でるように頭を撫でてくる美穂さん。


 なんで、こんなことになったかというと……


「美穂さん、誕生日おめでとう!!」

「お母さん、おめでとう」


 二人でクラッカーを鳴らす。

 

 絵里ちゃんといっしょに飾りつけやらいろいろ頑張って作った。


「今日は、美穂さんの好きなもの作っておきました」

「私も手伝ったの!」

「ありがとね、絵里。雪花君」

「えへへー」


 それからも、楽しい時間は続き三人で一緒にご飯をたべ、プレゼントの時間となった。


 絵里ちゃんからは、美穂さんへシュシュのプレゼント。絵里ちゃんも持っていておそろいのものらしい。


 僕はマフラーを作って、渡した。


 主夫になってから時間が沢山あるから、その時間でマフラーを作ったのだ。


 そして......


「これも」

「?なんでもいうことを聞く券?」

「はい。えりちゃんと僕からです」

 

 二枚渡して、それぞれ僕の分と絵里ちゃんの分だ。


「へぇー、そっか。じゃあ、まずは……」


 美穂さんは、一枚消費して絵里ちゃんに肩をもんでもらっていた。


 二人の仲睦まじい風景を見て思わず、僕はほっこりした。


「ありがとね、絵里」

「うん、またいつでも言ってね。するから」

「ありがとね。......それじゃあ」


 そう言って、僕の方をみた。


 僕には、どんなお願いだろう。


 毎日肩をもむとかかな?それとも好きなものを作って欲しいとかかな?


 僕が期待に胸を膨らませていると、帰ってきた答えは




「雪花君、ずっと前からやりたいことがあったの」

「はい」

「私の、子供になってくれないかな?」

「……え?」


 聞くところによると、前から僕を一度子供のように甘やかしたいと思っていたそうだ。


「僕は、何をすればいいんですか?」

「それは......」


 それから、部屋に連れていかれあの状態になったわけだ。


「雪花君は、今日はママと一緒に寝ましょうねー。よしよし」

「うぅ......」


 それからも、ずっと頭を撫でられたりトイレに行く時までついてこられたりして大変だった。


 今度、渡すときは条件を付けようとそう思った。

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