第52話

「絵里ちゃん」

「絵里」

「「誕生日おめでとう!!」」

「ありがとう!!」


 笑顔いっぱいで応えてくれる絵里ちゃん。


 準備しておいて良かったなって心から思う。


 数日前から、美穂さんと絵里ちゃんの誕生日について話し合って、飾りや、絵里ちゃんの好きな食べ物を用意した。


 はぁ......気が重い。


「じゃあ、ご飯たべよっか」

「うん!!」


 いつもより嬉しそうに頷く絵里ちゃん。可愛い。


「絵里ちゃん。はい、あーん」

「あーん。むふふ、今日は積極的だね。雪花お兄さん」

「嫌、かな?」

「嫌なわけない!!もっと、ちょうだい」


 そういって雛のように口を開けているので、そっと口に持って行く。


「ん、おいひい」


 スプーンを舐めるようにして、食べる。


「絵里ちゃん、スプーン離して?」

「美味しくて」

「……そっか」

「そうだよ?」

「次、何食べる?」


 そういう雰囲気になりそうになったのでどうにかして持って行く。


「そうだなー......」


 いつも以上に絵里ちゃんが甘えてきて、僕もそれに応えて絵里ちゃんの口に運んであげる。


 お腹もいっぱいになり、プレゼントをあげる時間になった。


「絵里、私からは……これ」

「わ!お母さん、ありがとう!!」


 美穂さんからは実用的な、配信用のマイクを貰っていた。

 

 最近調子が悪いって言っていたからね。

 

 そして、僕からは......


「これ、絵里ちゃん」

「あ、前からずっと欲しかった髪留め!」

「ありがと!」


 それと......


「ちょっと待ってて」

「?うん」


 美穂さんとともに別室に行く。


 きっかけは僕が思い出に残るようなプレゼントを渡したいなっていう発言からだった。


 美穂さんから、こんな提案をされたのだ。


「雪花君自身がプレゼントになればいいのよ」


 最初に聞いたときに何言っているんだと思ったけれど、どうやら本当に僕がプレゼントになるらしい。


 美穂さんに執事の服を着せられ、大きい人が入るほどのプレゼントボックスに入れられ荷台に乗せられ運ばれる。


「絵里、開けていいよ」

「雪花お兄さんは?」

「開ければ分かるよ」

「?うん」

「えっと......僕がプレゼントになっちゃった」

「っ!?」


 絵里ちゃんは驚いたような顔をしたのもつかの間、すぐに理解して僕の頬を両手で包み込む。


「絵里、雪花君は今日一日絵里のものよ」

「むふふ。さて、どうしちゃおうかなー」

「お手柔らかにお願いします」

「はーい。雪花お兄さんの燕尾服姿格好良すぎ」

 

 うっとりとした手つきで僕の胸板を指でなぞり僕の手をもって寝室の方へ。


最高の誕生日になったと次の日につやつやとした絵里ちゃんが語っていた。


 


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