第44話

「お前らも、もう明日で高校卒業だ。やりたいこと、やり残したこと。たくさんあったと思う。けれど、それはこれからの人生で生かすようにしなさい。就職するもの、大学に行く人さまざまだと思うが、これからも精一杯生きるように。それじゃあ、また明日」


 教壇から教師が去っていく。


 いつもより湿っぽい雰囲気の教室。


 一部は後期の受験が控えているため、参考書を片手にしている。

 

 そんな僕はというと、某料理サイトを開き、熱心に料理研究をしていた。


 最近は、魚のさばき方を学んだり、新しい料理に挑戦してみたり、絵里ちゃんのマネージャーとか少し忙しかったりする。


「雪花、何見てんの?」

「クックぱ〇ど」

「お前は、主夫か」


 主夫なんです。本当に。

 

 まぁ、こいつにはすこしだけ事情を話したけれど。


「じゃあ、また、明日な」

「また明日..........っていうのもこれで最後かもな」

「そうだな」


 なんとなく教室の隅を見た。


 あいつは、一人本を読んでいた。


「ただいまー..........って、絵里ちゃん何してるの?」

「良き妻ごっこ」


 いつもなら、全力で飛びついてくるので身構えていたら、予想と違う方で身構えなければならなかった。


「どう?新鮮でしょ?」


 正座をして出迎えてくれる絵里ちゃん。


「もうちょっと、大人になってからね」

「うぅ.........雪花お兄さんが子ども扱いするぅ」


 とぽかぽか叩いてくる。そういうところが子供らしくてかわいい。


「絵里ちゃんは、そんなことしなくてもよき妻になると思うんだけれどな」

「え!?そ、そうかな。え、えへへ」


 もじもじと頬を赤く染めて照れている姿が可愛い。


「っていうか.........さらっと私と結婚してくれるって言ったよね?えへ、えへへ。むふふ。私が結婚できる年になったら、速攻で婚姻届け出しに行っちゃおう。結婚式はどこにしようかなぁ。というか、もう三人で元の家に住めば良くない?家賃とかもろもろ面倒臭いし。お母さんとも毎日会えるから一石二鳥どころの話じゃないし。えへへ、広がるなぁ」


 一人で、トリップしているが、楽しそうにしているからそのままにしておこう。


 僕は、晩御飯の料理でもしようかな。


「やっぱり、結婚式は日本人だし神社で..........って雪花お兄さん、行かないで。私も一緒に晩御飯つくるぅ」

「はいはい。おいで?」

「うん!!」


 

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