第38話 過去が追ってくる

「じゃあ、これで今学期は終わりです。君たちはもう三年生です。当然遊んでいる暇はありません。勉強に専念しましょう。それでは、さようなら」


 教師が教壇から降りて、教室から去っていく。


 去年だったら、騒がしくなり夏休みに何をするかを話し合っていただろうけれど、皆は机にかじりつき参考書と睨めっこしていたり、単語帳片手に図書館に行くのか教室を出ていった。


「雪花、帰るのか?」


 幹也が英単語帳を片手に喋りかけてきた。


「うん、帰ろうかな」

「分かった、また二学期に」

「うん」

 

 家に帰って、僕は.........。


 学校を出て、数十分。家に着き玄関を開ける。


 すると、待ち構えていたのか絵里ちゃんが飛び出してきて、抱きしめてくる。勢いが強くて、少し痛い。


「おかえりなさい、雪花お兄さん」

「ただいま、絵里ちゃん」


 絵里ちゃんと美穂さんと付き合い始めて一か月くらいがだった。


 その間は、絵里ちゃんの甘えん坊がさらに加速してずっと僕に張り付いている状態だ。


「絵里ちゃん、買い物行くけれど、行く?」

「う、うん!!」


 絵里ちゃんは、僕と付き合い始めてから外に段々と出れるようになってきて今では一緒にスーパーに行けるまでになった。


 でも、未だに一人では外に出たくないらしい。


 絵里ちゃんが準備をし終えて、二人で外に出る。


「今日のご飯は何がいい?」

「うぅーん、なにがいいだろう。雪花お兄さんの料理は美味しいからなぁ」


 結局、僕は主夫になることを選んだ。


 三人で話し合った結果、


『雪花お兄さんは絶対、お外に行っちゃだめ』

『お出迎えして欲しいなぁ』


 と二人に懇願され、何日も考えた結果。


 主夫兼マネージャーと云う位置に定まった。


 正直、今でも良かったのかなって疑問は付きまとっているけれど、ご飯を美味しいって言って食べてくれる美穂さんと絵里ちゃんを見ているとこれで良かったとも思う。


「うぅーん、じゃあハンバーグがいいかな?」

「チーズ入れる?」

「入れる!!」

「はいはい」


 腕をより強く抱き、楽しそうにしている絵里ちゃん。


 これだけでも、幸せだって思え.........。


「.........赤坂じゃない?」

「っ!?」

「赤坂じゃん」

 

 目の前に、見た目が派手な高校生女子二人組がでてきた。


「知り合い?」

「.........こんな人知らない」


 そう言った絵里ちゃんは震えていた。


 .........。


「忘れちゃった?私。あの時は、楽しかったね?赤坂?」


 そう言ってにやりと笑った。











 

 

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