第37話
「おはよ、雪花君」
「お、おはようございます」
横を見ると、ニコニコと笑顔で僕の事をみている美穂さんと目が合う。
「雪花君の、顔を朝一でみれて嬉しい」
「僕も、美穂さんと一緒に居られて嬉しいです」
「うふふ、雪花君は女誑しだね」
僕の唇にそっと近づけ、啄むようなキスをしてほほ笑む。
「絵里、今頃、多分雪花君がいなくておかしくなってるかもしれないなぁ」
「そんなことありますか?一日あっていないだけですよ?」
「ふふっ。雪花君は絵里の愛を甘く見ているね。絵里は一日、いや半日離れただけでも心細く感じて、雪花君成分が不足しておかしくなっちゃうと思うよ。..........だって、私がそうだもん。いっつも仕事行っている時、雪花君はどうしてるんだろうとか、雪花君と一緒にいたいな、とか考えて、それが段々と不安に変わって.........ね?」
そういった、美穂さんの顔はほの暗い。
「私達は、もう雪花君がいなくちゃ生きていけないの。雪花君がもしいなくなったりでもしたら多分、壊れちゃうから」
美穂さんは大切なものを何個もなくしてしまってる。温かい家庭。愛していた旦那さん。自分のための時間。
..........絶対に、僕はこの二人の愛を受け止め切って見せるし、いなくならない。
「うふふ、雪花君。その顔、格好いい」
「え?」
「いま、私たちの事について真剣に考えてくれたでしょ?」
「..........はい」
「雪花君は、紳士的だから。でも気負いすぎてはだめよ?全部ひとりでしようなんてさせてあげない。私にもちゃんと頼って。というか雪花君は頑張らなくてもいいんだからね?ずっと私たちといてくれればそれでいいんだから」
「そ、それは..........。実は、絵里ちゃんにも主夫にならないかって言われていて」
「あら。それはいい提案ね。流石、絵里」
「だけれど、僕は仕事をしたいし....」
「うーん.........あのね?雪花君。どうして仕事したいの?」
「え?.........二人の事を少しでも助けたいから。二人を支えたいからです」
「そっか。でもね、私たちを本当に支えたいなら家にいて欲しいかな。お金の面は、絶対に大丈夫だから」
「そうなんですか?」
「言ってなかったけれど、私、社長というか取締役だし」
「え!?」
「それに、知ってると思うけれど絵里もものすごい稼いでるから」
「はい」
..........本当に主夫になる選択肢も見えてきた。
だけれど.........。
「気持ちはわかるわ。でも考えてみて?私は、仕事から帰って出迎えてくれる雪花君がいたらそれだけで生きていけるから」
想像したのか、布団の中でもぞもぞと悶えている。
..........僕が、想像しても気持ち悪いだけなんだけれどね。
主夫かぁ。
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