第35話 大人
「ごめんね、来てもらっちゃって」
「全然、大丈夫ですよ」
「お腹空いてるでしょ?予約しておいたから行きましょう?」
「は、はい」
いつもより、妖艶な笑みを浮かべている美穂さんに思わずドキッとしていしまう。
「絵里の事は大丈夫よ、先に説明しておいたから」
「分かりました」
三十分程度、車で走り、高そうな和風のお店に着いた。
不味い、マナーとか全然わからないんだけれど。
女将さんみたいな人に個室に案内され、部屋に着く。
「雪花君、緊張してる?」
「..........正直に言うと、緊張してます」
「大丈夫よ、私はマナーとか気にしないし、二人で楽しく食事したいなって思ったから」
「そ、そうですか。分かりました」
「ふふっ。可愛い」
マナーもあるけれど、僕はちゃんと言わなきゃいけないことがあるから。
絵里ちゃんともしっかり話した。
「え、絵里ちゃん」
「ん?なぁーに?」
「あのさ..........」
「お母さんの事?」
「え、あ、うん」
「..........正直ね、私は雪花お兄さんの事を独占したいよ?でも私はお母さんも幸せになって欲しいもん。だからね、お母さんの事もよろしくね?あ、でも、私の事疎かにしたら泣いちゃうからね?」
笑顔で、こういった絵里ちゃんに僕は頭を上げられない。
僕がしようとしていることは世間から見ればクズ野郎だ。
でも、二人がそれを了承していて、それが幸せの形なのだとしたら、僕が腹をくくって覚悟を決めるだけだ。
「雪花君、さ」
「なんですか?」
「絵里の事、本当にありがとうね」
「いえ、僕も絵里ちゃんと遊ぶの楽しいですから」
「ふふっ。絵里がいつも楽しそうにしていて私は嬉しいの」
「僕も絵里ちゃんが楽しそうにしていて、嬉しいです」
「そっか」
「それに、美穂さんも楽しそうに嬉しそうにしてくれると僕も嬉しいですから」
「.........うふふ。そっか」
「っ!!」
いつもより、なんだか美穂さんが.........エロい。
一つ一つの仕草にドキッとしつつも、いつもの美穂さんの感じもして安心もする。
料理が運ばれてきて、僕の緊張もほぐれてきたとき。
「はい、雪花君。あーん」
「え、あ、あーん」
「美味しい?」
「はい、美味しいです」
「ふふっ、良かった」
美穂さんが優しくほほ笑む。
大人の余裕というか、包容力みたいなのに思わず身を任せてしまいたくなる。
が、僕がちゃんと言わなければいけないことがある。
だけれど、僕、美穂さんの攻めに耐えられるのかな.........。
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