第34話  親友

「じゃあ、またな」

「また明日」


 友達と学校で別れる。


 学校に残って勉強をしていたため、あたりはもう真っ暗だった。


 ピロン。


『ねぇ、雪花君。今、時間大丈夫かな?ちょっとここまで来てくれない?迎えはそっちによこすから』


 美穂さんからの連絡で示された場所は、最近有名な、化粧品会社のビルだ。


「ねぇ、君が雪花君かな?」

「..........え?あ、はい」

「いきなりごめんね。美穂から連絡いってないかな?」

「あ、もしかして迎えに来てくれた方ですか?」

「そうそう、じゃあ送っていくから助手席のってー」

「はい、わかりました」


 言われるがまま、助手席に乗る。


「初めまして、雪花君。私は榎本霞えのもとかすみ。よろしくね」

「よろしくお願いします。雪代雪花です」

「いやぁ、まさか男子高校生を車に乗せる日がこようとは。美穂から聞いてるよー、雪花君すごくいい子だって」

「いや、そんなことはないですよ」

「またまたー。..........あのさ」

「はい」

「美穂の事、よろしくね」

「..........はい」


 何についてお願いされたかは理解できている。あとは、僕が逃げないことが大切だ。


「美穂が、雪花君の事話すときはいつも笑顔でさ、こっちも嬉しくなるんだ。だから幸せにしてあげてね」

「..........はい。僕は、絶対に幸せにします。霞さんも今までいろいろありがとうございました。これからは、僕がもっと幸せにして見せます」

「…ふふっ。よろしい」


 とうんうん頷いた。


「やっぱり、喋ってみたら分かったよ。雪花君がいい子なんだなって」

「そうですか?」

「うん、そうだよ。だから自信もって頑張ってね。あ、もうちょっとでつくよ」


 十数分程度車で走ったところに、大きなビルが建っていた。


「とうちゃーく」

「ありがとうございました」

「いえいえ」

 

 車から降り、エントランスに行くと美穂さんが待っていた。


「霞、雪花君を送ってくれてありがとうね」

「うん」

「雪花君に変なことしてないでしょうね?」

「してないよ!信用なさすぎか」

「だって、霞なんだもん」

「うぇーん。雪花君。美穂がいじめてくるー」

「霞さんは、本当にいい人でしたよ」

「雪花君が言うならいいけれど」


 と未だに霞さんにいぶかしげな視線を送っていた。


「じゃあ、雪花君いこっか」

「あ、はい。じゃあ、霞さん送ってくれてありがとうございました。今度会った時は美穂さんの昔の事聞きたいです」

「うん。いっぱい聞かせてあげるから。じゃあ、またねー」

「聞かせなくていいから!もぅ、早くいこ」

「はい」


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「どうだった?霞」

「すっごくいい子だった」

「「よかったぁ」」


 その場にいたメンバ―全員がほっと胸をなでおろす。


 ここにいるメンバーは、美穂と会社を立ち上げた最初期の面子で、美穂の親友たちでもある。


「というか、美穂が好きになっただけはある。あれは、心をまったく開かない美穂じゃなかったらすぐに惚れてるね」

「そんなになんだ。普段、抜けてるけれど、人の善悪に敏感な霞が言うなら間違いないね」

「一言余計だよ!?」

「今度、私もあってみたいな」

「私も」

「どうせ、すぐに会えるでしょ。結婚式とかで」


  その場にいたメンバー全員が「あぁ」と納得の頷きが出た。





 

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