第28話

「雪花、あけなさい」

「ちょっと待って」


 ほんとにまずいことになった。


 ことをさかのぼる事一時間ほど前。


「おはよ、絵里ちゃん」

「うぅ、おはよう、雪花お兄さん」


 僕のベッドで目を覚ます、絵里ちゃん。


 昨日は一緒に寝るって聞かなかったからな。


「朝ご飯作っちゃったから食べて」

「たべさせてー、雪花お兄さん」

「はいはい。起きたらね」


 今日は少しぼくも寝坊しちゃったからな。


 時刻は十時、少し遅いけれどいつもの休日が幕を開けるはずだった。


 ティロン。

 

 スマホが鳴った。


『あと十分くらいでそっちにいくらから待っててね』

「...........は!?」


 母親からの通知だった。


「ちょ、待って」

「何?どうしたの?雪花お兄さん、私たちの結婚式場が決まったの?」

「いつから、僕たちって結婚することになってたっけ?」

「照れなくてもいいのに」

「え、絵里ちゃん」

「何?」

「よく聞いてね」

「も、もしかして...........は、はい」


 何故か頬を染めて、此方をちらちらと伺う絵里ちゃん。


「今から...........僕の母さんがこの家に来る」

「...........え?」

「今から母さんが来るの」

「もしかして...........私の事を紹介してくれるの?」


 うん、凄い勘違いをしているような。


「あと、ちょっとで来るから自分のお部屋に帰ってくれると嬉しいなって」

「...........私のこと、紹介してくれないの?」


 と悲しそうな顔で言われてしまう。


 ...........はぁ、分かった。分かりました。


「じゃあ、もうちょっとで来ちゃうから準備して」

「うん!!」

「じゃあ、まず最初にご飯食べちゃって」

「はーい」


 と元気よくリビングへと向かっていく。


 さて、どうしたものか。


 うちの母親はなぁ、なんというか過保護というか。面倒見がよすぎるというか。


 そして、数十分後、今の状況に至るというわけだ。


「開けてー雪花」

「あとちょっとだから。絵里ちゃんまだ用意できない?」

「ふぅー、大丈夫。行ける、私ならやれる。よしっ、雪花お兄さん良いよ」

「じゃあ、入れるね」

「うん」


 玄関を開け、そこには満面の笑みの母さんがいた。


「どうして、玄関あけてくれないの?...........ってあら?その子は誰かしら」

「あ、あのわ、私はその..............お兄さんの..............お」

「分かったわ!私の雪花についに..............彼女ができたの!?」


 面倒くさくなりそうだった。


 

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