第26話

 私は、今、幸せだ。


 すごく幸せすぎて頭がおかしくなっちゃいそう。大好きな雪花お兄さんが隣に住んでいて、いつも会えて、私の事を見てくれて。


 雪花お兄さんは多分、神様が私に与えてくれた慈悲なんだろうなと思った。私のくそみたいな人生が、雪花お兄さん一人ですべていい方向へと進んでいる。


「大好き、雪花お兄さん」


 ベッドの中で呟いてみる。

 

 それだけで何かが満たされていく感覚があった。


 雪花お兄さんは今、学校だ。


 この時間が私は憂鬱で仕方がない。


 だって、雪花お兄さんは素敵で完璧で欠点のない人だから変な女が寄り付かないか私は心配でたまらない。


「雪花お兄さん大丈夫かな」


 やっぱり、家に監禁しちゃった方がいいと思うんだけれど。


 でも、雪花お兄さんには自由でいて欲しいっていう自分もいるし。


 だけれど、やっぱり不安になってしまう。


 お金なら、いっぱいあるし、正直勉強なんて雪花お兄さんにはしてほしくないんだけれど。


 ずっと私が養ってあげるし、働くなんてもっての外。


 だって、働いちゃったら私といる時間が減るんだもん。


 そんなこと私は、到底許せない。


「えりー、ごはん作るけれど、一緒に作らない?雪花お兄さんのために」

「つくるー!!」


 今日はお母さん、仕事がお休みみたい。


 お母さんには今まで迷惑をかけまくってしまっていたので、少しだけ負い目があるけれど、お母さんはそんなこと気にしなくて良いって、私が嬉しそうにしているのが一番だって言ってた。


 私とお母さんの仲も前よりさらに絆が深くなった。


 それもこれも全部雪花お兄さんのおかげなの。


「今日は豚カツ作っちゃおうか」

「うん。花嫁修業だね!」

「そうね」


 雪花お兄さんのためならなんだってできる。


 雪花お兄さんが望めばなんだってしてあげる。


 死ねって言うなら死ぬし、子供が欲しいっていうなら頑張って孕むから。


 だって、私達結婚するもんね。


「そういえば、絵里」

「なに?」

「いつ、雪花君と付き合うの?」

「え?」

「雪花君、とられちゃうよ?他の人とか..............私に」

「わ、私と雪花お兄さんはもう結婚するんじゃないの?」

「だって、まだ付き合ってもいないじゃない」

「お、お付き合いしなくても、心は通じ合ってるもん」

「じゃあ、私がお付き合いしちゃおうかな。もちろん、最終的には二人で幸せにするけれど、名義的には私の夫ってことになっちゃうよ?」

「だ、ダメ。無理。私付き合う。雪花お兄さんと付き合う!!」


 雪花お兄さん、今すぐつきあっちゃお?

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