第24話

 目を開けると、そこは絶景だった。


 甘い匂いに包まれ、少し寝汗で汗ばんでいて少しパジャマが肌にくっついていて..............って絵里ちゃん、下着は!?


「ん、んぅ..............。雪花お兄さん..............」


 僕が焦っているのにも関わらず当の本人は吞気に寝ている。

 

「..............もぅ、雪花君のえっち..............」

「っ!!」


 ドキッとして後ろをゆっくり振り向くと、美穂さんが幸せそうな顔で寝ている。


 絵里ちゃんが下着を着ていないってことは..............。


 意識をしてしまうと、妙に背中に当たる胸の事ばかりを意識してしまう。


 時刻は、五時。


 起きるのには少し早すぎる時間。


 でも、寝るに寝れないんだよなぁ。

 

「雪花お兄さんの、えっち。どこみてるのかな?」

「え、絵里ちゃん?」

「おはよう、雪花お兄さん。で、どこ見てたの?」

「そ、それは..............」

「お母さんのじゃなくて、私の、見て?」


 そう言って、僕の顔に胸を近づけ、ぎゅっと抱きしめてくる。


「お母さんのことは許してあげるけれど、他の子はダメだよ?」

「わ、分かった」

「雪花お兄さんのそういうところ大好き。朝から、雪花お兄さんと一緒になれてさいこぉー」

「私も入れてー」


 美穂さんが起きたのか、後ろから抱きしめられる。


「雪花君、いいにおいするね」

「そんなに、匂いかがないでください、汗臭いかもしれないので」

「そんなことないよ、雪花君にくさいところなんてないもの」


 この二人は、本当に僕の事を受け入れすぎなような気がしなくもない。


「最近、ね。雪花お兄さん」

「うん」

「私、幸せだけれどすごく怖くなっちゃうときがあるの」

「そうなの?」

「うん。..............急に雪花お兄さんがいなくなっちゃうんじゃないかって」


 絵里ちゃんは、未だに怖いんだろうな。誰かが急にいなくなるのが。


「大丈夫だよ、僕は絶対にいなくならないから」

「ほんと?」

「うん、ほんと。絵里ちゃんが将来、僕の事を必要としなくなるまでずっと一緒にいるよ」

「雪花お兄さんの事がいらなくなるなんてこと、絶対にないもん」

「そうだったら、嬉しいな。僕も、二人といると楽しいし、幸せだから」

「むふふ、雪花お兄さん、そういうこと恥ずかしがらずに言ってくれるから大好き」

「雪花君は女たらしだね、他の子にそんなこと言っちゃだめだよ?」


 二人はそう言ってぎゅっと抱きしめてきた。


 学校へ行く準備をするまでの間、僕たちはずっとベッドでくっついたままだった。

 

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