第17話 私は..................
いつのまにか、こうなってしまった。
全部私のせいだって、分かってる。
「なんで、..................」
この言葉を何度呟いただろう。
私は、大バカ者だった。
失ってから気付くなんて、よく言うけれど。失ってから気付いたって戻らないことなんてわかっているつもりだった。
でも私は正真正銘のバカで間抜けでどうしようもないクズだった。
最愛の彼の心が私から離れて行ってしまった。
「バカ、だよ」
私は、スマホに移る彼のLEINを見つめる。何度も見つめても動くことのなくなったLEIN。
雪花とこうなってしまったのは全部私のせいだ。
雪花と会った時を思い出す。
段々と夏に差し掛かったなんてことない日常のひと時だった。
私が、忘れ物を取りに教室へいくと、彼が一人、教室で勉強をしていた。
まだ一年生の時だった。
一生懸命、勉強をしている彼の横顔に自然と見入っていた。なんで、あんな棒立ちで彼の事を見つめていたのかも分からない。
正直、あの時にはもう雪花の事が好きだったのかもしれない。
一目惚れだったと思う。
「あ、あの」
私は、何故か声を掛けた。
「..................?なんですか」
彼は不思議そうな顔をしてこちらを見つめてきた。
「同じクラスの雪代君だよね」
「........そうですけれど?同じクラスの、
「う、うん」
「それで、どうしたんですか?」
「えっと、勉強してるの?」
「はい、今日の分の復習を済ませてしまおうと思って」
「そうなんだ」
最初は、こんなぎこちない会話だった。
だが、段々と会話をしていく中でぎこちなさが無くなり、お互い敬語を外して話せるようになっていた。
その日は、友達と放課後遊ぶ約束をしていたのでそれだけだったが、私の中に雪花という人が心の一部を占めた。
そんな日だったのは覚えている。
そこから、段々と彼に惹かれていき、会話も増え、デートもした。
そして、人生で初めての告白をした。
彼は驚いた顔をして、そして頷いてくれた。
その日は嬉しくてずっと舞い上がっていた。
付き合ってから、沢山デートもして、手もつないだし、キスだってした。
そんな順調な日々を送っていた、ある日だった。
「ねぇ、優希と雪花君、すごい仲いいよね」
「うん。私、雪花の事大好きだから」
「いいね。今、私たち少し倦怠期でさ」
「............倦怠期?」
倦怠期かぁ..................私には関係なさそう。
「そう、だから、私彼氏に嫉妬してもらうために、アイドルを推してるふりをしてるんだよね」
「へぇー」
「そうすると、彼氏が嫉妬してくれて。すっごく可愛くて、ずっと私の事をみてくれて..................」
「そうなんだ」
そう嬉しそうに話す私の友達。
雪花が私の事をずっと見てくれて、嫉妬してくれる..................。
私は、本当にバカだった。
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