第16話 はぁ..................

「おはよ、雪花」

「おはよう、幹也」

「なんか、ダルそうだな」

「そうかな?」


 家を出る前に、少しだけ絵里ちゃんとの格闘があったからかな。


 さかのぼる事、三十分ほど前。


「やだぁー。行かないで!!雪花お兄さんは私といるの!」


 袖を掴んでいやいやと顔を横に振って抵抗してくる。やっぱり学校へと行って欲しくないみたいで


「ごめんね、帰ったらいっぱい遊んであげるから」

「ほんとに?なんでもしてくれる?」

「う、うん。なんでもしてあげるよ」

「絶対、だよ?」


 涙目でそう訴えられたら頷くしかなく、すぐに帰る約束をした。


はぁ..............早く家に帰って絵里ちゃんを愛でたい。


「雪花、顔がだらしなくなってるけど?」

「え?あぁ、うん。しょうがない」

「しょうがない............?」

「なんでもない」

「..............なんでもないか」


 別に、幹也にはバレてもいいと思うけれど、できるだけ言いたくはない。


「ほら、授業始まるぞ、席に戻って」

「........怪しい」

「さっさといけ」

「へいへい」


 怪しみながらも素直に自分の席に戻っていく。

  

 ..............放課後が憂鬱だ。


 授業が終わるのが苦痛に感じたのは、初めてかもしれない。いつもなら早く終われと願っているのに。


 先生のありがたいお言葉をいただき、ショートホームルームが終わり、下校の時間になってしまった。


 早く終わらそう。


 校門を出て、あいつといつも待ち合せしていた場所へと行く。


「あ、雪花。えへへ。楽しみで終わったらすぐにここへきちゃった」

「あっそ」

 

 付き合っていたころだったら、可愛いと思っていた行動でさえ今はどうでもいいと思えた。


 早く、終わらせてえりちゃんと遊びたい。その一心だった。


「じゃあ、いこっか」

「ああ、早くいこう」

 

 僕は、あいつの歩く速度に構うことなく先に行く。


 驚いた様な顔をして、後ろから遅れてついてくる。


 歩くこと、10分程度だろうか。


 あいつの家に着き、向かい合って座る。


「ちょっと待ってて、飲み物とってくるから」

「いらないから、早く話しをしよう」

「え、あ、うん」


 一瞬だけ悲しそうな顔をしたが、すぐに立ち直って僕の瞳を見つめてくる。


「あの..............ね、雪花」

「..............」

「えっと、その..............」

「..............なに?」

「わ、私たち、やり直さない?」


 ..................はぁ。


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