第15話 おはよ

 ピピっとスマホのアラームが鳴っているのが遠くから聞こえる。


「う…る、さい」


 立ち上がり、何とか止めることに成功する。

 

 眠たい目をこすり、どうにか洗面所まで行き、顔を洗う。最近の、朝のルーティーンだ。


 六時前にはキッチンに立ち、七時前には作り終わる。


 ここまでは、何もない普通の生活だがここからが少し今までとは違う。


 隣の部屋の合鍵をもって、自分の部屋を出る。


「おじゃましまーす」


 家の中は真っ暗だった。


 美穂さんにきいたところ、絵里ちゃんは、相当不健康な生活を送っているため僕が朝起こしてせめて昼夜逆転を防いで健康になってもらおうと絵里ちゃんに提案したところ


「毎日、雪花お兄さんが私の部屋まできて起こしに来てくれるの!?私、健康になる!!」

 

 そう言って、はしゃいでいたので、美保さんも僕も微笑ましい気持ちになった。


 僕は絵里ちゃんが眠っている部屋に入り、カーテンを開ける。


「んぅ」


 あどけない顔立ちの綺麗な女の子がぬいぐるみを抱いて寝ていた。


 やっぱり、絵里ちゃんは可愛い。


「絵里ちゃん、朝だよー。おきて」

「んぅ、いやー」


 寝ぼけて 僕の袖を掴みいやいやと首を横に振っている。


 ..............あ、ダメだ。つい甘やかしたくなってしまった。


「絵里ちゃん、起きなきゃだめだぞ?」

「うー、雪花お兄さん、もうちょっとだけだからー」

「だめ」

「うぅー、雪花お兄さんも一緒に寝よ?」


 そう言って、寝ぼけた目で両手を広げて、ベッドの中へと誘おうとしてくる。


 ..............ものすごく、一緒に寝たい。


 寝起きで、パジャマが若干はだけていて僕より年下なのに色気がすごい。胸とか..............こぼれて仕舞いそうな程大きいし。


「あー、雪花お兄さん、エッチな目、してるよ。..............おいで?」

「あ、絵里ちゃん」


 手を引かれて、そのままベッドへと引きずり込まれてしまう。


「むふふ、雪花お兄さんの匂い大好き。私のパジャマに擦りこんじゃお」


 一層強く抱きしめられる。


 大きく実ったたわわが僕の顔を埋め尽くす。少しだけ息苦しいけれど、幸せなので止めてともいえない。

 

「雪花お兄さん、くすぐったいよ。もぅ、えっち」

「ご、ごめんね」

「いいの、雪花お兄さんなら。何しても構わないから」


 僕の頭を胸に抱えながら、ゆっくりと撫でられる。


「雪花お兄さん、今日、学校休んじゃお?」

「え、うーん」

「一緒にずっと、私のベッドでゴロゴロしよ?」


 絵里ちゃんの甘い匂いが鼻孔をくすぐる。頭が正常な判断を下せなくなる。


「ずーっと、いちゃいちゃして、ゲームして学校の事なんて忘れちゃおうよ」


 追撃を掛けるように甘い言葉を僕にかけてくる。


 …いいかな。少しくらい学校なんて。


 学校..............。


 ..............。


「だーめ、やっぱり起きなきゃだめだよ?」

「むぅー、あとちょっとだったのに」


 ..............むかつくことに、そういえばあいつと今日は決着をつけなくてはならないのだ。


 はぁ....今からでも憂鬱になってきたけれど、まず、絵里ちゃんにご飯を食べさせなきゃ。


「作ったご飯、冷めちゃうんだけれどなー」

「え」

「絵里ちゃんのために一生懸命つくったのに」

「そ、それを早く言ってよ!雪花お兄さん。早く食べよ?」


 急いで、ベッドから起き上がり、部屋を飛び出していく。

 

 ..............癒される。


 

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