第8話 思いの行く先。
絵里ちゃんの家に泊まってから数週間が経ち、学校も始まった。二年生の時から受験を意識していたが今年から本腰を入れて勉強しないとなぁ。
「なぁ、雪花」
「なんだ?」
「お前、またなんかあったのか?」
とこっちを心配そうにみつめてくる幹也。
こいつには、いろいろ迷惑かけたからな。
「いや、特に何でもない」
「何でもなかったら雪花君の彼女さんはあんなにじっとこっちを見ないような気がするんだが?」
「ただ、別れただけだからなんでもないよ」
「そうか、そうか、別れただけか。.................別れた!?」
「そう、別れただけ」
「よ、良かったのか?」
幹也には今まで相談とかいろいろしていて迷惑かけまくったからなぁ。
「うん、良かったんだよ。もう、大丈夫なんだ。今まで迷惑かけたな。ありがとう」
幹也は僕の顔をじっと見る。
「.......そっか。雪花が吹っ切れて前に進めているならもうなんも言わないよ」
ほんと、お前っていいやつだよなぁ。
「そうだ、放課後久しぶりにゲーセン行かないか?」
「あー.......ごめん、今日は用事あるわ」
「雪花もついに本格的に受験勉強か?」
「ま、まぁ.......そんなところかな?」
「ふぅーん」
と訝しげにこちらを見てくるが丁度チャイムが鳴り、席に戻っていく。
今日は絵里ちゃんと何して遊ぼうかなぁ。
学校が終わり、急いで教室を出ようとしたとき。
「ねぇ、雪花」
「.......」
.......あぁ、絵里ちゃん元気にしてるかなぁ。
「ねぇ、雪花ってば」
「.......」
美穂さんもお仕事大変だし、家事のお手伝いもしてあげたいし。
「雪花!!」
「......何?」
うるさいなぁ。
「あ、えっと......その、さ」
「......帰る」
面倒臭いなぁ。早く言ってほしい。
「もう一回、ちゃんと話さない?」
「.....嫌だね。今までちゃんと話そうとしても聞いてくれなかった奴の話なんて聞く価値ないし」
「それは.....ごめんなさい」
「それに、喋りかけてくるなっていったよな?」
「.....それも、ごめんなさい。で、でも、もう一度私とちゃんと話をしてくれませんか?」
「ごめん、今日、普通に用事あるから。じゃ、さようなら」
「ま、待って!」
僕は制止を振り切り、走り出した。
引き止められることが面倒だと感じた。
そんな自分に少しだけ驚いた。付き合っていたときは嬉しかっただろうに。
こう感じるのは、確実に絵里ちゃんと、美穂さんのおかげだろうな。
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