第7話 私のお兄さん
「はーい、みんなこんばんわー」
コメントが目で追うのが困難なほど素早く流れる。
突然だが、私はVtuberである。
まぁ、そこそこの登録者数がいて、企業の方から誘いがあって今は企業勢となって配信している。
『こんばんわー』
「こんばんわー』
『こんにちわー』
「こんにちわーじゃないでしょ。今の時間帯は」
『そうでした』
『草」
『草』
「wwwww』
「wwwwwwwww』
『今日、というか最近テンション高いね』
「そんなにテンション高いかな?」
『思った、最近高い』
『なんか、いいことあった?』
「ふふー、なーんにもないよー」
『絶対なんかあったやつで草』
『もったいぶらずに教えてー』
「しょうがないなぁーじゃあ、ちょっとだけ教えちゃおうかなー」
テンションが高いのはきっと雪花お兄さんのせいだ。
私を救ってくれた、王子様。
私のゴミのような人生に現れた、私の最も愛する人。雪花お兄さんを閉じ込めて飼ってしまいたいくらい。
おぉっと、配信中だった。
雪花お兄さんの事をそのままいうのはまずいから、ちょっとぼかして言おう。
「最近、好きなお菓子ができてね、そのお菓子が優しい味で深みがあって、包み込んでくれるような味で」
本当に食べてしまいたいくらい
『へー、なんてお菓子?』
『気になる』
『可愛い』
『包み込まれるようなお菓子とはww』
「なんて、名前だったっけ?」
『好きな、お菓子の名前を忘れないでw」
『気になる、買いたいから思い出してー』
「なんだったけー」
もちろんそんなお菓子はないので、適当にその辺のコンビニのお菓子をいっておく。
『あーあのお菓子か』
『ゆいちゃん、あのお菓子好きなんだー』
『今度買ってみよう』
「みんなも、ぜひ食べてみてねー。それじゃあ、今日は、あの、大人気ゲームをやっていこうかなー」
『やったー』
『楽しみ』
「わくわく』
『ニチャニチャ」
『ニチャニチャすんなww』
そのお菓子が、爆売れしてコンビニから一時期なくなったのは別のお話。
そうして、ゲームを初めて一時間十分楽しみ、配信を終わらせる。
「雪花お兄さん」
思い浮かぶのは、雪花お兄さんの顔だ。
最近、暇があればずっと雪花お兄さんの事ばかりを考えている。雪花お兄さんが来てくれる日はいつも楽しみ。お兄さんのなでなで気持ちいいし、お膝の上に座るのもポカポカするし、抱き着くとお兄さんの匂いが私の全身を駆け巡って本当に最高。
「はぁー会いたいなぁ」
今すぐ会いたい。
会って抱きしめて、なでなでしてほしい。
「はぁー、コンビニみたいに近くにお兄さんのおうちがあればいいのに」
そうすれば、毎日会える。
ん?
......................ふふっ、なんで私はこんな簡単なことに気づかなかったのかな。
「おかーさん」
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