第6話 不安
「あの、絵里ちゃん?」
「なに?」
「ほんとに一緒に寝るの?」
「うん」
とコクコク可愛く頷く絵里ちゃん。
何故、こんなことになっているかというと、事の発端は絵里ちゃんの発言だった。
僕が、お風呂に入り終わりでてくると
「雪花お兄さん」
「ん?」
「一緒に寝よ?」
「い、いやそれは......................」
「ダメ?」
「雪花君、絵里と一緒に寝てくれない?」
「美穂さんはいいんですか」
「私は絵里と雪花君が仲がいいほうが嬉しいわ」
仲がいいとかの次元じゃないような気がしたが、絵里ちゃんと美穂さんのまぁまぁ攻撃によっていつの間にか流されていた。
「ねぇ、雪花お兄さん」
「ん?なに?」
「なんでもなーい」
と嬉しそうにニコニコ笑っている絵里ちゃん。そんな絵里ちゃんが愛おしくてつい頭をなでてしまう。
「雪花お兄さんのナデナデ気持ちよくて好き」
「そんなに?」
「うん、雪花お兄さんの優しさを感じるから」
「そ、そうかな」
「うん.......雪花お兄さん抱きしめていい?」
「いいよ」
絵里ちゃんがぎゅっと抱きしめてくる。
改めて、絵里ちゃんを見ると凄く可愛い。
長くて透き通る黒髪、小さくて抱きしめやすい体、大きい目、きれいな声。
こんな子に抱きしめられているなんて僕はなんて幸せ者なんだろう。
「私、幸せ者だなぁ」
「なんで?」
「だって、こんな優しくてかっこよくて完璧な人と一緒にいられるなんて、前世で私はどんな得を積んだんだろう」
「そんなに?別に僕は完璧なんかじゃないよ」
「そんなことない!少なくても私にとっては完璧な人なの」
といって一層ぎゅーっと抱き着いてくる。
本当に可愛い。
僕もそっと抱きしめ返す。
「はぅぅー。本当にさいこー」
と蕩けたような声を出して甘えてくる。
「絵里ちゃんは甘えん坊だね」
「甘えん坊じゃないもーん」
「ほんとかなー」
「ほんとだもーん」
そういって、僕の首筋に顔をうずめる。
「ねえ、雪花お兄さん」
「ん?」
「雪花お兄さんは私の前からいなくならない?」
と心配そうな瞳で僕を見つめる。
この子は、不安なんだ。
お父さんがいなくなった記憶や、いじめられた記憶はこの先ずっと絵里ちゃんの記憶にこべりついている。
だけど
「僕は、絶対にいなくならないよ」
そんな不安を抱かせないくらい、楽しい思い出で塗りかえられるように僕は不安を吹き飛ばせるよう笑顔で言う。
「ありがと、雪花お兄さん」
「うん、いつでも頼ってね」
「.......だ....き。....してる」
「ん?なに?」
「なんでもないもん」
そういって顔を隠すように布団の中に隠れてしまった。
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